アンハッピー・ウエディング〜後編〜
高貴なお嬢様の飲み物じゃないだろうになぁ、と思いながら。

それでもリクエストされたので、俺は先程のスイカジュースをグラスに入れ、氷をいくつか入れてから。

「どうぞ…。…えっと、お口に合えば良いんですけど…」

「ありがとう」

椿姫お嬢様の前に、スイカジュースのグラスを置いた。

やっぱり貧乏臭くて飲めないわ、と言われるかと思ったが。

椿姫お嬢様は普通の顔をして、普通にスイカジュースに口をつけた。

…勇気あるなぁ…。

「ね、美味しいでしょ?」

「…ごくん。そうね。スイカの甘さが爽やかで、美味しいわ」

本当に?

本気でそう思ってます?お世辞じゃなくて?

常ににこにこしてるから、その顔の下の真意が読めない。

…あぁ、もう考えるのよそう。

いい加減、俺はこの場を去るよ。

「それじゃ、その…。姉妹水入らずで、ごゆっくり…」

「あれ?悠理君どっか行っちゃうの?」

ちょ、黙って立ち去らせてくれよ。

「じ、自分の部屋に戻ってるだけだよ」

しばらくしたら戻ってくるから。

「何か用事があったら呼んでください。それじゃ」

強引に話を終わらせ、くるりと踵を返し。 

椿姫お嬢様と寿々花さんを置いて、俺は急いでリビングから出ていった。

…はぁ。やっと一息つける。
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