アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「寿々花さん…。あんた、マジなのか?」

「ほぇ?」

きょとんと首を傾げて、誤魔化そうとしても駄目。

俺も真剣だからな。寿々花さんも真剣に答えてもらうぞ。

「本気で、この材料でチョコレートを作るつもりなのか?」

今ならまだ間に合うぞ。

今ならまだ、実は全部ネタのつもりでしたテヘペロ、で許される。

いや、輸入販売と言うからには、これだけでも相当なお値段がかかってるはずだから。

もう、既にこれを全部ネタでしたテヘペロ、で済ませられる範囲を超えてるような気がするが。

しかし、今ならまだ引き返せる。ギリギリの瀬戸際にいるのだ。

やめるなら今だぞ。

これからスーパーに行って、板チョコを買ってくることだってでき、

「ふぇ?材料買ったんだから、これで作るよ?」

「…」

何を当たり前のことを、と言わんばかりの口調。

最後の防波堤は、脆くも儚く崩れ去った。

決壊。

交渉決裂。

そうか…やっぱり駄目だったか…。

引き返せないんだな、もう…。

…分かったよ。そうと決まったら、俺も覚悟を決めよう。

ここで、「ふざけんな、出来る訳ねーだろ馬鹿か」と一喝して叱らないから。

毎回毎回、寿々花さんの奇行に付き合わされることになるんだろうなぁ。

…今更だけど。

「よし、分かった…。じゃあ、やるか」

「うん。頑張ろー」

精々、食べられるものが出来ると良いな。
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