アンハッピー・ウエディング〜後編〜
すると、雛堂がこう聞いてきた。

「一体いくらしたんだろうな?カカオ豆の値段なんて分かんねぇけど、海外から輸入して販売してるなら、きっと高くついただろうに」

…。

…確かに。

考えたことなかったけど、言われてみればそうだな。

あのカカオ豆、一体いくらで購入したんだろう…。

「安くはないと思いますよ。当然」

と、乙無。

「だよな。…まぁ、でも寿々花さんは金持ちだから、数千円くらいなら…」

「何言ってるんですか、悠理さん」

え?

「単位、間違ってますよ。数千円ではなく、数万円です」

えっ。

今になってようやく明かされる、衝撃の新事実。

俺達が食べているこのチョコ、そんな高級品なの?

「冗談だろ?いくら輸入販売でも、個人での購入だぞ?さすがにそこまでは…」

「所謂『チョコレート手作りキット』みたいな商品で使われている、一般的なカカオ豆とは全く別物だと思いますよ」

…そうなの?

ちょっと食べただけで、そんなことまで分かんの?

「何グラム購入したのかは分かりませんが…。もしかしたら、数万円でも安いかもしれませんね」

「ま、マジかよ…。あれがそんなに高級品だったとは…」

寿々花さんあんた、いくら金持ちだからって。

カカオ豆の為に、ウン万円単位のお金をポンと出すとは。

経済観念が狂ってるぞ。

「ってことは、このチョコ、色んな意味で超高級チョコなんだな…。味わって食べよう」

「あぁ…そうしてくれ」

こんな「高級」なチョコレートは多分、もう人生で二度と食べられないと思うぞ。
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