アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「ま、考えてみれば当然だよな。悠理兄さんは無月院の姉さんにべた惚れだからなー」

「何言ってんだよ、あんたは…。いい加減にしろよ」

誰が誰にべた惚れだって?

そんなんじゃねーっての。

俺と寿々花さんは、別に…大人達が勝手に決めた関係で…。

「で、何処にデートしに行くんだ?夜景の見える観覧車とか?」

そんなロマンチックなこと、寿々花さんに期待する方が間違いだ。

「ゲーセンだ」

「えっ、マジ?」

「マジだよ。行ったことないから、行ってみたいんだってさ」

「マジかよ。可愛いな、無月院の姉さん」

うん、俺もそう思う。

高校生にもなって、一度もゲームセンターに行ったことがないなんて。

しかも、行ったことないから一緒に行ってみたい、と強請ってくるなんて。

非常に微笑ましい。

「ちくしょー。無月院の姉さんとの先約があるんじゃ、譲らない訳にはいかねぇ…」

「残念だったな」

「じゃあ来週!来週は絶対奢ってもらうからな!」

何?その執念。

諦めろよ。

何としても奢ってもらおうという、強い意志を感じる。

はいはい。分かりましたよ。

付き合ってやるよ…来週な。

「な?真珠兄さんもそれで良いだろ?」

「良い、良いですよ何でも。良いから今は話しかけないでください。イングレア様のお声が聞こえない」

乙無は雛堂を鬱陶しそうに払い除け、邪神(笑)と対話していた。

脳内で会話してるらしい。ふーん。
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