アンハッピー・ウエディング〜後編〜
これも、クレーンゲームの景品としては定番だよな。

チョコレート、ポテトチップス、ガムやキャンディーまで、何でもある。

しかも面白いのは、普通にスーパーのお菓子コーナーで見かけるような、定番の味ばかりじゃなくて。

恐らくゲームセンター限定商品だと思われる、珍しい変わり種の味がある。

ポテトチップスのうすしおレモン味、だってよ。

そんなのあるんだ。美味しそう。

あとは、これもゲームセンターの景品限定なのだろう。

ただの板チョコなんだけど、通常の10倍くらい大きい板チョコなんてのもある。

へー。面白いな。

まぁ、普通にスーパーで売ってるお菓子だったら、わざわざクレーンゲームで取る必要ないもんな。

スーパーで買えよ、って言われそう。

そして、そんな珍しいお菓子の景品が並ぶクレーンゲームの中で、寿々花さんが選んだのは。

…「うんまい棒」が、山のように積み上げられたクレーンゲーム。

「…あんた、本当これ好きだよな…」

「えへへー」

いや、褒めてるんじゃなくてさ。

ハロウィンの時も箱買いしてたもんな。

山のように積まれた、色んな味のうんまい棒。

定番のコンポタ味や、サラダ味の他。

恐らくゲームセンター景品限定商品であろう、プリン味や生姜焼き味、ワサビ味のうんまい棒もある。

生姜焼き味美味しそう。

ってか、ワサビ味って何だよ。昨日の俺の夢再現か?

思い出すと口の中苦くなるから、やめてくれ。

「やってみても良い?悠理君」

「あぁ。どうぞ」

「やったー」

お菓子のクレーンゲームは、さすがに一回100円のようだ。

まぁ、そりゃそうだよな。

特にうんまい棒なんて、一本10円ちょいくらいだろ?

100円で元を取ろうと思ったら、一回の挑戦につき9〜10本取れないと、損をしたことになってしまう。

そう思うと、相当シビアだよな。

一回の挑戦で10本って、かなり難易度高いと思う。

クレーンゲームで元を取ろうとする方が間違ってるか。

楽しければ良いんだよ。ちょっとくらい損しても。

最悪一本も取れなかったとしても、寿々花さんが楽しんでくれたらそれで良い。

「アームの動かし方、分かるか?まずはここに百円玉を入れて…」

まずは、百円玉をコイン投入口に投入。

すると、アームを動かすボタンがピカピカと点滅し始めた。

「分かるだろ?右矢印のボタンを押すと、アームが右に動く。で、こっちの…上矢印のボタンを押すと、アームが奥に動く」

「ふむふむ」

「ボタンから手を離したら、自動でアームが降りる仕組みになってるんだ。…分かるか?」

口で説明するの、結構難しい。

こういうのは、口で言うよりまず一回やって見る方が早いよな。

「まぁ、試しにやってみろよ。そうしたら分かるから」

「うん、やってみるー」

と言って、寿々花さんは嬉々としてボタン操作を始めた。

「うーん、ここかな…。あっ、間違って手離しちゃった」

クレーンゲームあるある。

うっかり、ボタンから手を離したしまったせいで。

寿々花さんが動かしたアームは、うんまい棒の山より遥か手前、何もない虚空のスペースを空振り。

ういーん、とそのまま初期位置に戻ってしまった。

「…」

「…」

景品にカスりもせず、空振りとは。

人生初のクレーンゲームの結果は、非常に虚しいものであった。

…ど、ドンマイ。
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