アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「寿々花さん…」

「ふぇ?」

「何があったんだ?このうんまい棒…どうしたんだよ?」

俺は、恐る恐る寿々花さんに尋ねてみた。

すると。

「もう一回挑戦してみようと思って、やってみたんだー」

とのこと。

「でも、百円玉持ってなかっただろ?」

「うん。だけど、百円玉じゃなくても五百円玉を入れたら、6回挑戦出来るって書いてあったから」

寿々花さんは、クレーンゲームのコイン投入口を指差した。

本当だ。百円玉一枚で1回プレイ、その隣に五百円玉の投入口があって、そちらに入れると6回挑戦出来るらしい。

百円玉を一枚入れるより、五百円玉を入れた方が1回分お得ってことか。

「五百円玉なら一枚持ってたから、そっちを入れて…6回挑戦したんだー」

「…」

「そしたら、一回目で5本、二回目で10本、三回目で20本くらい落ちてきて…」

何?その倍々ゲーム。

「6回やったら、こんなに手に入ったんだよ」

と言って、寿々花さんは獲得したビニール袋いっぱいのうんまい棒を、誇らしげに見せてくれた。

…うん。

突然の才能開花ってことだな?

一回失敗した後の適応能力が高過ぎる。

この大量のうんまい棒…。お店で買えば、確実に五百円以上…充分に元は取ってる。

元取ってるどころか、めちゃくちゃ得をしてると思う。

「面白いねー、クレーンゲーム。他にもやりたいなー」

「あ、うん…」

「よし、今度はこっちのチャッパチュップスを取ろう」

今度は、あの有名な棒付きキャンディーのクレーンゲームの前に立った。

百円玉を入れて、ゲームスタート。

プロの目つきで、アームと景品の距離を測り…。

的確な指使いでボタンを押し、手を離すと。

アームがキャンディーの山をぐっと押し、その拍子にまたしても、キャンディーの土砂崩れが発生。

ドサドサと、落ちる落ちる。大量のチャッパチュップスが獲得口に。

これには、近くを歩いていた他のお客さんも目が点になっていた。

凄い光景だよな。俺もそう思う。

「わーい。いっぱい取れたー」

一回の挑戦で取れる量じゃないだろ、それ。

スーパーで買ったら、明らかに百円を超えている。

「もう一回やろー」

二枚目の百円玉を入れて、もう一回アームを動かすと。

一度土砂崩れを起こして、地盤が緩んでいるとでも言うのか。

一回目より更に大量のチャッパチュップスが、落ちる落ちる。

ちょ、加減をしろよ。

あんまり大量に落ちたものだから、獲得口が詰まって開かない。

結局寿々花さんは、チャッパチュップスのクレーンゲームに三百円を費やし。
 
獲得したチャッパチュップスを入れる為に、俺はもう一度さっきの店員さんに、景品袋のおかわりを頼まなければならなかった。
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