アンハッピー・ウエディング〜後編〜
そんな調子で、寿々花さんは様々なクレーンゲームのお菓子を乱獲した。

景品袋、もう何個目だ?

そろそろ持ちきれないんだけど。

俺があまりに景品袋をおかわりするものだから、店員さんも訝しんだのだろう。

最初は朗らかに接してくれてたのに、段々と怪しげな目つきで俺を見るようになった。

違う、違うんだよ。これには事情が。

俺を怪しんだ店員さんが、さり気なく俺の後ろをついてきて。

そこで店員さんが見たのは、お菓子のクレーンゲームの前で、巧みにアーム動かし。

大量のお菓子を乱獲する、寿々花さんの姿だった。

バケモノを見る目だったよ、あれは。

ともかく、俺が不正をしてビニール袋を何枚ももらっている訳じゃないってことが分かっただろ?

クレーンゲームからお菓子が全部なくなるんじゃないかと、はらはらしながらこちらを見ている店員さんの視線を感じたので。

「寿々花さん、そのくらいにしておいてやれ」

「ほぇ?」

ノリノリでクレーンゲームを楽しんでるところ、悪いんだけど。

あまりに俺達だけでお菓子を取り過ぎたら、他のお客さんに悪いだろう。

店員さんの視線も痛いしな。

ここいらで、勘弁してやってくれ。

「あんまり取り過ぎても、食べ切れないだろ?」

この大量のうんまい棒だけでも、二人ではとても消費しきれない量なのに。

これ以上乱獲したら、俺達揃って虫歯になるぞ。

「そっかー。じゃあやめよー」

よし。そうしてくれ。

寿々花さん、狩り終了。

「悠理君。他のゲームやっても良い?」

「良いよ、どうぞ」

折角ゲーセンに来たんだから、クレーンゲーム以外にも色々楽しんでくれ。

「うーん。どれにしよっかなー」

きょろきょろと、様々なゲームを物色し。

寿々花さんが立ち止まったのは。

「悠理君、これ面白そう。やってみたい」

ゲーセン定番の、あの有名リズムゲーム。

そう、音楽に合わせて太鼓を叩くリズムゲーム、『太鼓の鉄人』であった。

ゲーセン行ったことないって人も、これはさすがに見たことあるんじゃないか?

めちゃくちゃ有名だよな。

ショッピングセンターのちょっとしたゲーセンコーナーに行けば、必ずと言って良いほどある。

俺は…あんまりやったことないけどな。

「良いよ。やってみな」

「二人でもプレイ出来るって。悠理君、一緒にやろー」

「マジかよ」

俺も一緒にやんの?得意じゃないんだけど…。

…まぁ良いか。

俺はかろうじて何回か経験したことあるけど、寿々花さんは完全に未経験なんだろうし。

素人同士、良い勝負出来るんじゃないか?

…などと思ったことが、既にフラグだったのかもしれない。

「良いよ。一緒にやろうか」

「やったー」

大量の景品袋を、ひとまず床に置いて…っと。

百円玉を二枚投入して、ゲームスタート。
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