アンハッピー・ウエディング〜後編〜
あの超有名リズムゲームに、今更説明など不要だと思うが…。

「ところで、悠理君」

「何だ?」

「これ、何をするゲームなの?」

「…始まってから言うのかよ…」

せめて、お金を入れる前に聞いてくれよ。

もう始まっちゃったじゃん。

うーん。どう説明したものか。

「音楽に合わせて、画面に赤マークと青マークが出てくるから、タイミング良く太鼓を叩くんだよ」

…って説明で合ってる?良いよな?

果たして伝わってるだろうか。

「赤マークは太鼓の真ん中、青マークは太鼓のフチを叩くんだ」

試しに俺は、付属のバチで太鼓をドン、カッ、と叩いてみせたが。

「ほぇー」

分かってなさそうな顔してんな。

まぁ、これも口で説明するより、やってみた方が早いんだよな…。

なんて思ってる間に、楽曲選択画面が出てきた。

「寿々花さん、曲はどれにする?」

「曲?」

「好きな曲に合わせて太鼓を叩くんだよ。どれでも良いから選んでくれ」

『太鼓の鉄人』と言えば、その豊富な収録曲も大きな魅力の一つだよな。

流行りの曲は勿論、若干マイナーでコアな曲まで、幅広い守備範囲を誇っている。

だが、俺は世間で流行りの流行歌には疎いし。

寿々花さんなんて、

「うーん。知ってる曲が全然ない」

「…だろうな…」

俺でさえ知らない曲ばっかなのに、寿々花さんが知ってる曲なんて…。

しかし『太鼓の鉄人』は、そんな音楽に疎い俺達にも親切だった。

「おっ…。童謡があるぞ」

「あ、ほんとだー」

アルプス一万尺とか、さくらさくらとか。

幼稚園児が音楽の時間に習いそうな、誰でも知っている童謡が何曲か入っている。

これなら分かるだろ。さすがに。

「どれにする?寿々花さん」

「悠理君はどれが良い?」

「どれでも良いよ。さすがに動揺なら、全部知ってるから」

歌詞までは覚えてないけど、メロディは分かる。

「そっかー。じゃあ…ジングルベルにしよーっと」

…この季節に?

どれでも良いとは言ったけど。何故ジングルベル。

…まぁ良いか。寿々花さんが自分で選んだんだから。

それじゃ、ジングルベルを選択っ…と。

すると、次に出てきたのは難易度選択の画面。

出たな。

「ほぇ?悠理君、これなぁに?」

「難易度を選べるんだよ。簡単、普通、難しい…それから…」

「鬼モード、ってなぁに?強そう」

「難しいモード以上に難しいモードだよ。初心者は無理、」

「なんだか面白そうだね。鬼モードにしてみよーっ」

「あ、馬鹿」

寿々花さんは俺の制止も聞かず、さっさと鬼モードを選択。

あーあ…。馬鹿だ…。

俺は素直に簡単モードにするからな。難易度は一人ずつ選べるシステムで良かった。

どうなっても知らないぞ。

「お、始まったぞ」

難易度選択が終わると、早速プレイ開始。
< 575 / 645 >

この作品をシェア

pagetop