アンハッピー・ウエディング〜後編〜
10分後。

えー。人生初のプリクラの感想ですが。

「…疲れた…」

どっと疲れました。はい。

「わー。見て見て、悠理君。さっき撮った写真が、シールになってるー」

寿々花さんは、早速印刷されたプリクラを嬉々として持ってきた。

楽しそうで何より。

俺の疲労感なんてどうでも良いんだよ。寿々花さんが楽しんでくれたなら、それで。

いやぁ、初めて体験したけど。

プリクラって凄いな。

何がって、もう何もかも全てが凄いとしか言いようがない。

最初から最後まで超ハイテンションなノリで、ついていくのに苦労したよ。

驚いたのは、肌の白さやら、目の大きさやら、髪の色まで自由自在に選ぶことが出来るという点だ。

フレームを選べるだけじゃねーの?

肌の色や髪の色まで変えられるんじゃ、それもう本人じゃねーじゃん。

完全に別人だよ。

で、落書きで好き勝手自由に写真を弄れる訳だろ?

やっぱり別人じゃん。

「はい、こっちは悠理君の分」

「…どうも…」

印刷されたばかりのプリクラを、恐る恐る受け取ってみてみると。

「…これは酷い…」

いくら初めてとはいえ、これはひでぇよ。

そこに写っていたのは、完全に挙動不審に陥った、無駄に肌が白いブサメン。

やっぱり男が撮って良いものじゃないって。

隣に写っている寿々花さんが美人なもんだから、余計俺のブサメンが際立ってるって言うか…。

…ぶっちゃけ、恥ずかしいから、もう…。俺の部分だけ消去したい。

それなのに。

「ねぇねぇ、見て見て。これ、悠理君の目からビームが出てるんだよー」

寿々花さんは無駄にハイテンションで、嬉しそうに、自分が落書きしたプリクラを見せてくれた。

俺の両目から、赤いキラキラのビームが発射されている。

なんつー落書きしてんだよ。

「これ、面白いねー」

「…良かったな…」

「やったー。これ、ペンケースに貼ろう」

「それはやめてくれ」

絶対に外に持ち出しちゃ駄目。絶対。

俺のこんなみっともない姿、誰にも見られたくないもん。

このプリクラは俺の黒歴史として、机の引き出しの奥の奥に、深く封印されることになるだろう。
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