アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「えーっと…。寿々花さん…?」

「でも、悠理君だってお友達と遊びに行きたいよね。悠理君は私と違って、お友達がたくさんいるんだし…」

相変わらず、ボソボソと呟いている。

一人で何喋ってんの?

「…よし。ここは笑って送り出してあげよう」

「寿々花さん、あんたさっきから一人で何を…」

「…うん!大丈夫だよ、悠理君」

寿々花さんは突然声を大きくして、こちらを振り向いて言った。

えーっと…?

「行っておいでよ。私、ちゃんとお留守番してる。エリート自宅警備員になるから」

ニートかよ。

「本当に大丈夫か?一人で留守番出来る?」

「うん、出来るー」

幼稚園児とお母さんの会話。

大丈夫なのか…?本当に。任せて大丈夫か。

「なんか不安なことがあったら、俺のスマホに連絡してくれ。すぐ帰ってくるから」

「うん、分かった」

「お土産買って帰るからな。楽しみにしててくれ」

「やったー」

…若干の不安は残るものの。

一人で留守番出来ると言い張るのだから、多分大丈夫…だと思おう。

まぁ、寿々花さんに留守番を頼むのは、今回が初めてじゃないし。

留守番と言っても、丸一日じゃなくて、精々数時間程度だし。

任せても問題ないだろう。






…と、この時軽く考えていたせいで、後に深刻な騒動を引き起こすことを、俺はまだ知らない。
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