アンハッピー・ウエディング〜後編〜
で、迎えた週末。

玄関で、ぶんぶんと手を振る寿々花さんに見送られ。

俺は雛堂と乙無の三人で、雛堂が行きたがっているという高級カフェ(?)に向かった。

俺にとって高級カフェと言えば…真っ先に思い浮かぶのは、有名なコーヒーショップ『スターボックス』。略してスタボだが。

多分雛堂が行きたがってるカフェは、スタボではないんだろうな。

だって、カフェに行く為に、わざわざ電車に乗って移動するくらいだから。

電車に乗って、駅に着いたらそこから更にバスに乗って。

大移動だよ。

「一体何処まで行くんだ…?」

スマホを見ながら道案内をしてくれる雛堂に、俺はそう尋ねた。

遠くね?こんなところまで。

「大丈夫、大丈夫。もうすぐだからさー」

「コーヒー飲むくらい、別に近所でも良いじゃん」

「ちっ、ちっ。分かってないなー悠理兄さん。今日これから行く『カフェ』は、そんじょそこらのカフェとは違うんだよ」

ふーん?

何?そんじょそこらのカフェじゃないカフェって。

「乙無、何か聞いてるか?」

はしゃぐ雛堂を尻目に、乙無に尋ねてみたところ。

「さぁ。僕が質問しても、『当日までお楽しみ!』とか言って答えてもらえませんでしたし」

「そうか…」

何がお楽しみ、だよ。

どんなカフェなんだろうな?

高級カフェって言うくらいだから、海外産のお高いコーヒー豆で作ったコーヒーを出すんだろうか。

などと考えながら、雛堂の後をついていくと。

「おっ、見えてきたぞ」

「…?…!」

雛堂が指差す方向に、目指すお店があった。

すぐに分かったよ。

だって、お店の前に行列が出来てるから。

すげぇ。めっちゃ並んでる。

「嘘だろ?まだ午前中なのに…」

喫茶店が混むのは午後からじゃねぇの?

午前中で、既にこの行列。

本当に有名店なんだな。

「そーなんだよ、ここは。今日は土曜日だから特別人が多いんだろうけど、平日でも並ばずには入れないらしい」

と、雛堂。

へぇー…。平日でも行列が出来るほど…。

凄いな。こんな店があったのか。

「ってな訳で、自分らも並ぶぞー」

俺達は、行列の最後尾に並んだ。

今日はこれ以外に何の予定もないから、並ぶのは構わないけど…。

果たして俺達の順番が来る頃には、何時になっていることやら…。
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