アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「君もいい加減、無月院家の人間として自覚を持つべきだよ。良い機会なんじゃないかな」

「でも…。でもそうしたら、悠理君と一緒にいられなくなっ…」

「別に良いじゃないか、そんなことは」

「…!」

寿々花さんが何を躊躇っているのか分からない、とばかりに。

円城寺は大げさな態度と口調で、寿々花さんを詰問した。

「いずれこうなることは分かっていただろう?君と彼とは所詮、身分が違う。君は本当に自分が彼に釣り合うと思っていたのかい?」

「…それは…」

「自分の立場というものを、もっとよく考えてみるべきだね」

という、最高に偉そうな口調で円城寺は寿々花さんに説教をした。

つくづく、俺がこの場にいなくて良かったな。

ゲンコツ一発じゃ済まなかったと思うぞ。

「…立場…。釣り合う…」

寿々花さんは、小さな声で円城寺が言ったことを復唱した。

「それに、君の将来の為にもそうした方が良いと思うけど?」

「…将来…」

考える。寿々花さんの頭の中。

円城寺の言ったこと、そしてついさっき送られてきたばかりの、椿姫お嬢様から届いた荷物。の、中身。

それらをぐるぐる考えて、寿々花さんは親とはぐれた子供のように不安そうな表情だった。

寿々花さんがかつてないピンチに襲われているというのに、この時の俺は、呑気に黒いオムライスを食べてたんだから。

後になって事の次第を聞いて、これほど自分を恨んだことはない。
< 596 / 645 >

この作品をシェア

pagetop