アンハッピー・ウエディング〜後編〜
…もしこの推論がマジだったら、俺はもう金輪際、二度と円城寺を家には入れないぞ。

『セールスと円城寺お断り』のシールを作って、玄関の前に貼り付けてやる。

やって良いことと悪いことってもんがあるだろうが。

あの野郎、今度は寿々花さんに何をしやがった?

「あいつ…。マジでぶっ飛ばしてやろうか」

「恋敵がいるって大変だなー。悠理兄さん」

あまりに苛立ち過ぎて、雛堂の言葉が耳に入らなかった。

…恋敵?

「まぁ、まだそうと決まった訳じゃないですけどね。これはあくまで推測であって…。本当はもっと別の理由があるのかも」

と、乙無。

うん。それはまぁ…そうなんだけど。

「話してくれないことには、何も分からないし…」

「無理矢理聞き出すのもどうかと思うもんな」

それなんだよ。

寿々花さんが、何か深刻なものを抱えているのは確かなんだが。

それを無理矢理聞き出そうとして、余計に傷つける結果になってしまったら逆効果だろ?

「もう数日待ってみては?時間薬という言葉もあるくらいですし。自分から話してくれるかもしれませんよ」

…そうだろうか?

そうだったら良いんだけど…。果たしてそれまで俺が保つだろうか。

「そーそー。今日家に帰ったら、いつもの無月院の姉さんに戻ってるかもしれないぞ」

「…そうかな…」

「まー、でもハンストされる意味が分かんねぇけどな。何で?やっぱりダイエットとか?」

「さぁ…。我々には思いもよらないようなことなんじゃないですか?」

俺達には、思いもよらないようなこと…。

実は、この時の乙無の推論は当たっているのである。

しかし、そのことを俺が知るのは、もう少し先の話である。
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