アンハッピー・ウエディング〜後編〜
午後の授業を、どうにかこうにか終えて。
俺は、急ぎ足で家に帰った。
雛堂が言ってたみたいに、家に帰ったら寿々花さんが元通り、元気を取り戻してくれてたら良いな、と。
儚い希望を抱きつつ、家路を急ぐ。
「ただいまー…」
と言いながら、玄関の扉を開けたが。
寿々花さんからの返事はなかった。
…何だろう。心に隙間風。
玄関に靴があるから、家に帰ってきてはいるはずだが。
俺は真っ先にリビングに向かったが、そこに寿々花さんの姿はなかった。
いつもなら…リビングで、お絵描きしたりゲームしたり、おままごとしながら待ってるんだけどな。
ここに居ないってことは…自分の部屋だろうか?
「…」
今すぐ寿々花さんの部屋に向かって、強引に扉を抉じ開けて。
「もしかして土曜日、円城寺来なかった!?」と問い詰めたい衝動に駆られた。
…が、到底そんなことは出来なかった。
やったら一生嫌われそうだろ?
仕方なく、寿々花さんが自分から天の岩戸を開いて、出てきてくれるのを待つことにした。
俺も、それほど辛抱強い方じゃないんだけどな…。
果たして、この状況にいつまで耐えられるかどうか…自信がなかった。
寿々花さんの部屋からは、物音一つ聞こえなかった。
本当に家に居るんだろうか、と疑いたくなるくらい静か。
しんと静まり返った我が家は、さながら廃墟のようである。
その廃墟のキッチンに立って、俺はその日の夕食を作った。
寿々花さんに喜んでもらおうと思って、今日のメニューはオムライスである。
いつものオムライスとは一風変わった、チーズソースがけオムライスである。
寿々花さんの為に、オムライスのレパートリー増やそうと思ってさ。
ネットでレシピ検索してたら、これが出てきたんだ。
いかにも美味しそうだからと思って、特別な日の夕食のメニューにと思って、これまで温めてきたのだが…。
今日こそ、この切り札を切る時。
何に悩んでるのか知らないけど、大好物のオムライスを食べて、少しくらい元気を出してくれ。
あと、ついでに俺に相談してくれ。
という期待を込めて、せっせとオムライス作り。
それから、土曜日に買ってきた黒いみたらし団子。
そろそろ食べないとヤバいと思うので、今日はこれがデザートってことで。
チーズソースの白と、みたらし団子の黒のコントラストが、いかにも目に悪い。
…さて、問題は。
引きこもり中の寿々花さんが、部屋の扉を開けて出てきてくれるか、である。
「…よし」
テーブルの上に並べられた、ほかほかと湯気を立てるチーズソースオムライスをしばし眺め。
俺は、意を決して二階に上がった。
無論、寿々花さんを呼ぶ為である。
無理矢理部屋をこじ開けるのは駄目だけど、夕飯の為に呼びに行く…くらいは許されるよな?
そろりそろり、と忍者のように足音を潜めて、寿々花さんの部屋の前に立つ。
…別に緊張する必要はないはずなのに、気づいたら俺は、ごくりと生唾を飲み込んでいた。
面接官の部屋に入る時の気分。
寿々花さんの部屋の前に立って、一回深く深呼吸してから。
「寿々花さーん…。おーい、起きてるか?」
こんこん、と部屋の扉をノックしてみた。
さぁ、どうだ。どう出る?
俺は、急ぎ足で家に帰った。
雛堂が言ってたみたいに、家に帰ったら寿々花さんが元通り、元気を取り戻してくれてたら良いな、と。
儚い希望を抱きつつ、家路を急ぐ。
「ただいまー…」
と言いながら、玄関の扉を開けたが。
寿々花さんからの返事はなかった。
…何だろう。心に隙間風。
玄関に靴があるから、家に帰ってきてはいるはずだが。
俺は真っ先にリビングに向かったが、そこに寿々花さんの姿はなかった。
いつもなら…リビングで、お絵描きしたりゲームしたり、おままごとしながら待ってるんだけどな。
ここに居ないってことは…自分の部屋だろうか?
「…」
今すぐ寿々花さんの部屋に向かって、強引に扉を抉じ開けて。
「もしかして土曜日、円城寺来なかった!?」と問い詰めたい衝動に駆られた。
…が、到底そんなことは出来なかった。
やったら一生嫌われそうだろ?
仕方なく、寿々花さんが自分から天の岩戸を開いて、出てきてくれるのを待つことにした。
俺も、それほど辛抱強い方じゃないんだけどな…。
果たして、この状況にいつまで耐えられるかどうか…自信がなかった。
寿々花さんの部屋からは、物音一つ聞こえなかった。
本当に家に居るんだろうか、と疑いたくなるくらい静か。
しんと静まり返った我が家は、さながら廃墟のようである。
その廃墟のキッチンに立って、俺はその日の夕食を作った。
寿々花さんに喜んでもらおうと思って、今日のメニューはオムライスである。
いつものオムライスとは一風変わった、チーズソースがけオムライスである。
寿々花さんの為に、オムライスのレパートリー増やそうと思ってさ。
ネットでレシピ検索してたら、これが出てきたんだ。
いかにも美味しそうだからと思って、特別な日の夕食のメニューにと思って、これまで温めてきたのだが…。
今日こそ、この切り札を切る時。
何に悩んでるのか知らないけど、大好物のオムライスを食べて、少しくらい元気を出してくれ。
あと、ついでに俺に相談してくれ。
という期待を込めて、せっせとオムライス作り。
それから、土曜日に買ってきた黒いみたらし団子。
そろそろ食べないとヤバいと思うので、今日はこれがデザートってことで。
チーズソースの白と、みたらし団子の黒のコントラストが、いかにも目に悪い。
…さて、問題は。
引きこもり中の寿々花さんが、部屋の扉を開けて出てきてくれるか、である。
「…よし」
テーブルの上に並べられた、ほかほかと湯気を立てるチーズソースオムライスをしばし眺め。
俺は、意を決して二階に上がった。
無論、寿々花さんを呼ぶ為である。
無理矢理部屋をこじ開けるのは駄目だけど、夕飯の為に呼びに行く…くらいは許されるよな?
そろりそろり、と忍者のように足音を潜めて、寿々花さんの部屋の前に立つ。
…別に緊張する必要はないはずなのに、気づいたら俺は、ごくりと生唾を飲み込んでいた。
面接官の部屋に入る時の気分。
寿々花さんの部屋の前に立って、一回深く深呼吸してから。
「寿々花さーん…。おーい、起きてるか?」
こんこん、と部屋の扉をノックしてみた。
さぁ、どうだ。どう出る?