アンハッピー・ウエディング〜後編〜
…しかし。よく考えてみれば。

インスタントラーメンは食べる、ってことは…ダイエットではないのでは?

あれって結構カロリー高、いのか?知らんけど。

少なくとも、あんまり健康に良さそうではないよな。

それに…突然セレブ思考に目覚めて、上流階級の料理しか食べない。…という訳でもなさそう。

インスタントラーメンって、思いっきり庶民の味方じゃん。

つまり、考えられるハンストの理由は…。

「…なんか、俺に、気に入らないことでもあるのか?」

「ふぇっ…?」

他に考えられない。

俺は何にも…全く…覚えはないんだが。

寿々花さんに…愛想を尽かされるようなきっかけが。

そんな出来事があったのか。

俺、寿々花さんに何か悪いことした?

思い当たる節はない。が。

俺は家の中で喧嘩をしたくないので、もし寿々花さんが俺に腹を立てているのなら、素直に謝るよ。

気に入らないことがあるなら、改める。少なくとも、改める努力はする。

だから、もし俺に不満があるのなら、何でも言って欲しい。

「なんか怒ってんの?」

「何にも怒ってないけど…」

「…じゃあ、俺に何か不満があるとか?」

「…何もないけど…」

「…それなら、何で俺のこと避けてるんだ?」

「…」

あ、それは答えられないのか…。

言いたくない理由があるのか…。何なんだ…?

「…と、い…けど」

「…はい?」

「…」

寿々花さんは金魚みたいに口をぱくぱくして、言葉を一つ二つ、言いかけたが。

結局それは言葉にならず、尻すぼみに消えてしまった。

…やっぱり駄目か。

「…と、ともかく、あの、もう、悠理君のご飯は要らない」

だ、そうだ。

…へぇー。ふーん。そう…。

…泣きそう。

「…俺が作ったものが受け付けないって言うなら、この間の土曜日に買ってきたお土産のみたらし団子だけでも…」

「…」

寿々花さんは無言で、ふるふる、と首を横に振った。

みたらし団子も駄目だって。やっぱり黒いからか?

俺が作ったものって言うか…「俺が用意したもの」が嫌ってこと?

…やっぱ泣きそう。

「そうか…。まぁ、うん…。そんな時もあるよな…」

「ゆ、悠理君…。…傷ついた?」

うん。俺のライフはもうゼロだよ

でも、それは別に寿々花さんが悪い訳じゃないから。

「別に大丈夫だよ…」

「え、えっと…。ご、ごめんね…?」

「何で寿々花さんが謝るんだ?」

何が何だか全く分からないけど、悪いのは俺なんだろ?多分。

別に寿々花さんが謝ることは何もない。

…ともあれ、どう考えても俺は邪魔者みたいなので。

「…邪魔者は退散するよ」

そう言い残して、俺はそそくさと寿々花さんの部屋から出ていった。

…心に隙間風、どころじゃない。

心に風穴開けられた気分だよ。
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