アンハッピー・ウエディング〜後編〜
…。
「…はぁぁぁ〜…」
「えっ、ゆ、悠理君大丈夫?」
「ごめん…身体から力が抜けて…」
よっぽど緊張していたのか、寿々花さんが留学を諦めると聞いた途端に、思いっきり脱力。
その場にへたり込んでしまった。
「よしよし。痛いの痛いの飛んでけー」
「いや…何処も痛くはねぇけど…」
ただ身体から力が抜けただけだよ。
寝不足だしな。昨日の夜寝てないから、余計に。
「留学…行かないって言ってくれたのは良いけど、あんた、本当に良いのか?」
「ほぇ?」
俺と寿々花さんの我儘で、勝手に決めちゃってるが。
「その…あんたの実家の…無月院本家の大人達は、寿々花さんに留学して欲しいと思ってるんじゃ…」
「?思ってないよ。本家の人達は…お姉様ほど私に期待してないもん」
「…」
「もし私に留学して欲しいと思ってるなら、椿姫お姉様の時みたいに…もっと前からそういう話が出てたと思うよ」
…そうなのか。
寿々花さんに留学して欲しくない俺にとっては、本家の無関心は有り難いことなんだろうが。
それでもやっぱり、無月院本家の大人達には腹が立つ。
あいつらは、いちいち椿姫お嬢さんと比べなきゃ気が済まないのか?
「椿姫お姉様が私に留学を勧めてきたのも、それが理由だと思うの」
「…どういうことだ?」
「本家の人達が何も言わないから、黙ってるだけで…。本当は私も留学に行きたがってるんじゃないか、って気を使って…お姉様から声をかけてくれたんじゃないかな」
…そうなの?マジで?
じゃあ、椿姫お嬢さんは寿々花さんに箔を付ける為に留学を勧めてきたんじゃなくて…。
寿々花さんに無関心な無月院本家の大人達に代わって、寿々花さんも行きたいなら行って良いのよ、と。
気を遣って、わざわざ声をかけてくれたのか?
椿姫お嬢さん、あの人相変わらず良い人だな。
良い人だけど…俺の心臓に悪いから、今後留学の話を持ちかけてくるのはやめてくれ。
「お手紙にも、そう書いてあったの。遠慮しなくて良いのよ、って。でも行きたくないなら無理しなくて良いからね、って」
「…そうだったのか…」
「だから、最初は私も留学するつもりはなかったんだ。悠理君と離れたくなかったから…」
「…」
奇しくも俺達、同じことを考えていたらしいな。
似た者同士ってことか?…あまり嬉しくないが。
「でも…その時に円城寺君が来て、私と悠理君は身分違いだって…そう言って…」
「…」
「悠理君に釣り合うようになるには…何か立派なことをしなきゃいけないって思って…それで…」
…ふーん。
やっぱり円城寺、あいつぶっ飛ばしておくわ。
つまり、奴が勝手にうちに上がってきて、寿々花さんに余計なことを吹き込まなければ。
俺も寿々花さんも、ここ数日、胃に穴が開くほど悩む必要はなかったってことじゃないか。
円城寺の罪は重い。
「…ごめんね、悠理君」
「別にあんたが謝ることじゃないし…。それに、謝るくらいなら、もう二度と…身分違いだとか、相応しくないとか、そんなことは言わないでくれ」
分かってるんだよ。俺だって。身分違いだってことは。
寿々花さんは何故か、俺に釣り合わないと思い込んでいるようだし。
俺は俺で、自分が寿々花さんに釣り合うと思ったことは一度もない。
お互い様なんだよ。俺達。
身分違いなのは、百も承知。
その上で一緒に居たいと思ってるんだから、それで良いじゃないか。
「…はぁぁぁ〜…」
「えっ、ゆ、悠理君大丈夫?」
「ごめん…身体から力が抜けて…」
よっぽど緊張していたのか、寿々花さんが留学を諦めると聞いた途端に、思いっきり脱力。
その場にへたり込んでしまった。
「よしよし。痛いの痛いの飛んでけー」
「いや…何処も痛くはねぇけど…」
ただ身体から力が抜けただけだよ。
寝不足だしな。昨日の夜寝てないから、余計に。
「留学…行かないって言ってくれたのは良いけど、あんた、本当に良いのか?」
「ほぇ?」
俺と寿々花さんの我儘で、勝手に決めちゃってるが。
「その…あんたの実家の…無月院本家の大人達は、寿々花さんに留学して欲しいと思ってるんじゃ…」
「?思ってないよ。本家の人達は…お姉様ほど私に期待してないもん」
「…」
「もし私に留学して欲しいと思ってるなら、椿姫お姉様の時みたいに…もっと前からそういう話が出てたと思うよ」
…そうなのか。
寿々花さんに留学して欲しくない俺にとっては、本家の無関心は有り難いことなんだろうが。
それでもやっぱり、無月院本家の大人達には腹が立つ。
あいつらは、いちいち椿姫お嬢さんと比べなきゃ気が済まないのか?
「椿姫お姉様が私に留学を勧めてきたのも、それが理由だと思うの」
「…どういうことだ?」
「本家の人達が何も言わないから、黙ってるだけで…。本当は私も留学に行きたがってるんじゃないか、って気を使って…お姉様から声をかけてくれたんじゃないかな」
…そうなの?マジで?
じゃあ、椿姫お嬢さんは寿々花さんに箔を付ける為に留学を勧めてきたんじゃなくて…。
寿々花さんに無関心な無月院本家の大人達に代わって、寿々花さんも行きたいなら行って良いのよ、と。
気を遣って、わざわざ声をかけてくれたのか?
椿姫お嬢さん、あの人相変わらず良い人だな。
良い人だけど…俺の心臓に悪いから、今後留学の話を持ちかけてくるのはやめてくれ。
「お手紙にも、そう書いてあったの。遠慮しなくて良いのよ、って。でも行きたくないなら無理しなくて良いからね、って」
「…そうだったのか…」
「だから、最初は私も留学するつもりはなかったんだ。悠理君と離れたくなかったから…」
「…」
奇しくも俺達、同じことを考えていたらしいな。
似た者同士ってことか?…あまり嬉しくないが。
「でも…その時に円城寺君が来て、私と悠理君は身分違いだって…そう言って…」
「…」
「悠理君に釣り合うようになるには…何か立派なことをしなきゃいけないって思って…それで…」
…ふーん。
やっぱり円城寺、あいつぶっ飛ばしておくわ。
つまり、奴が勝手にうちに上がってきて、寿々花さんに余計なことを吹き込まなければ。
俺も寿々花さんも、ここ数日、胃に穴が開くほど悩む必要はなかったってことじゃないか。
円城寺の罪は重い。
「…ごめんね、悠理君」
「別にあんたが謝ることじゃないし…。それに、謝るくらいなら、もう二度と…身分違いだとか、相応しくないとか、そんなことは言わないでくれ」
分かってるんだよ。俺だって。身分違いだってことは。
寿々花さんは何故か、俺に釣り合わないと思い込んでいるようだし。
俺は俺で、自分が寿々花さんに釣り合うと思ったことは一度もない。
お互い様なんだよ。俺達。
身分違いなのは、百も承知。
その上で一緒に居たいと思ってるんだから、それで良いじゃないか。