アンハッピー・ウエディング〜後編〜
園芸委員の仕事を無事に終え、帰宅後。

「はぁ〜っ…。死ぬかと思った…」

生き返るよ、マジで。

本当。死にかけていたところに、ようやく一条の光が差し込んだ気分。

大袈裟じゃないぞ。真剣にそう思ってるから。 

リビングの冷房の温度を思いっきり下げ、大きなグラスにたっぷり氷を入れ。

冷蔵庫でキンキンに冷やしたアイスコーヒーを、グラスいっぱいに注ぐ。

ついでに、冷凍庫から買い置きの棒アイスを取り出す。

マジで、もうね。今日口に入れたものの中で一番、断トツぶっちぎりで一番美味いわ。

暑く、渇いた身体に染み渡る。

思いっきり涼んで、文明の利器エアコンを満喫していると。

「あ、悠理君お帰り…」

「おぉ、寿々花さん…。ただいま」

俺が帰ってきた音を聞きつけたらしく、リビングに寿々花さんがやって来た。

そして、リビングをきょろきょろと見渡して、一言。

「…何だか、この部屋寒い」

…あ、ごめん…。

「さっき冷房の温度、めちゃくちゃ下げたんだよ…。死ぬほど暑かったもんだから」

俺は丁度良いけど、ずっと冷房の中にいた寿々花さんにとっては、寒いかも。

「冷たいもの食べ過ぎじゃない?」

片手に氷たっぷりのアイスコーヒー、もう片方の手に棒アイスを握った俺を見て、寿々花さんがそう言った。

…つい。暑かったもんだから。

「マジで暑かったんだよ…。旧校舎の教室、灼熱地獄だからな。エアコン壊れてて」
 
新校舎にいる寿々花さんにとっては、全然関係のない話かもしれないけど。

旧校舎の生徒は、一日死にそうな目に遭ってたんだぜ。それを忘れないでくれ。

「ちなみに、今晩のメニューは冷やし中華だからな」

「わー。冷たいものばっかりだ。悠理君、本当に暑かったんだね」

暑いよ。

あんまり暑いから、つい冷たいものが食べたくなってさ。

良くないなぁとは思いつつも、どうしても身体が冷たいものを欲してしまう。





…思えば、こういうことの積み重ねが良くなかったのだろう。
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