アンハッピー・ウエディング〜後編〜
試合開始のホイッスルが鳴ったことさえ、何処か遠くの出来事のように思えて。

試合が始まったのに、俺はぼーっとコートに棒立ちしているだけだった。

俺がボケっと立っているのを見て、敢えてそこを狙ったのか。

それとも、偶然そこにボールが飛んでいっただけなのか。

相手チームが打ったサーブが、俺の真正面に飛んできた。

普通なら、レシーブして打ち返すところなのに。

ぼんやりとしていた俺は、ボールが目前に迫っていることに気づいていなかった。

「…え?」

気づいたのは、ボールが顔面めがけてクリーンヒットした瞬間だった。

容赦ない相手チームのサーブが、俺の顔面に直撃。

「へぶっ」

最高に間抜けな声を出して、俺はボールの勢いのまま、ばったりと後ろに倒れた。

これには、味方チームと相手チームも、体育の先生も。

見ていたギャラリーの皆さんも、ポカン。

「…だ、大丈夫か!?星見の兄さん!」

慌てて、コートの外から雛堂が駆け寄ってきてくれたが。

このときの俺は、ばたんきゅー、状態。

鼻血をぼたぼた垂らしながら、目の前にひよこが円陣組んで踊っていた。

「お、おい。目の焦点が合ってないんだけど。大丈夫か、しっかりしろって!」

身体を前後に揺さぶられたけど、無意味だった。

俺はそのまま、意識を失った。
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