アンハッピー・ウエディング〜後編〜
…何とも間抜けな顛末である。

そこからのことは、正直思い出したくない。

鼻血を垂らしながら、へろっへろになった俺を、クラスメイト達が保健室に連れて行ってくれ。

保健室でベッドに寝かされ、鼻にティッシュを詰めて、目が覚めるのを待った。

幸い、30分程度で意識が戻ったのだが。

頭はふらふらして、足元も覚束無いし。

鼻血は止まったものの、顔が痛いの何のって。

バレーボールとはいえ、顔面に直撃弾を食らったらそれなりのダメージはある。

そいつの責任じゃないのに、サーブを打った相手チームのクラスメイトが、わざわざ謝りに来てくれたよ。

非常に申し訳なかった。

いや、あんたさんはただ、普通にサーブ打っただけだから。

取りもせず避けもせず、間抜けに顔面レシーブかましてしまった俺が悪い。

大丈夫だから、あんたは何の責任もないから気にするな…と。

言いたかったのだけど、ぶっちゃけ呂律が回らなくて、上手く言えなかった。

保健室で熱を測ってみたら、38度を軽く越え、39度に迫る勢いだった。

もう、これを見ただけで一発アウトって感じ。

これには保健室の先生も、「もっと早く保健室に来なさいよ」と叱る始末。

ごもっとも。

保健室なんてみっともないから、と思って痩せ我慢していた報いである。

顔面サーブで鼻血噴いて保健室に担ぎ込まれる方が、余程みっともないよなぁ。

我ながら情けなくて呆れるが、そのような余裕もなく。

とにかく早退して、病院行きなさい、と保健室の先生が学校にタクシーを呼んでくれた。

教室に、学生鞄や制服を取りに帰るほどの元気もなかった。

その為、半袖のダサい体操着のまま、身一つでタクシーに乗って病院に直行。

診察の結果は、「風邪ですね。お薬出しておきます」とのこと。

薬をもらって帰宅して、何とも情けない格好のまま、ベッドに直行して倒れ込み。

…で、今に至る。

そんなこと考えてる余裕がなくて、敢えて気づかない振りをしていたが。

今日だけで俺、めっちゃくちゃ無様な姿を晒している気がする。

…思えば、朝起きた時から嫌な予感はしていたんだよ。

今なら分かる。朝から具合悪かったんだって。

寝坊したせいで焦っていたから…というのは、苦しい言い訳に過ぎない。

つーか、寝坊したのも体調が悪かったからではないかと思われる。

風邪かぁ、風邪…。風邪なんていつぶりだろう?

何年も前、インフルエンザで倒れたのが最後だったような気がする。

元気で丈夫が取り柄だったのに、こんな情けない、無様な姿を晒してしまうなんて。

クラス皆に鼻血ブーの瞬間を見られるなんて、どんな罰ゲームだよ。

こんなことなら、もっと早く雛堂と乙無のアドバイスに従って。

さっさと保健室に行って、休んでりゃ良かった。

なんて、後悔しても後の祭りってな。
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