アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「そんな訳だから、悠理君。はい、おじやどうぞ。あーん」

…あーんって。

…さっきから思ってたんだけどさ。

「何なんだ?その食べさせ方…」

「何が?」

「いや、その…」

ちょっと冷静になって考えてみると。

俺達今、相当小っ恥ずかしいことしてるよな?…多分。

やめた方が良いと思うんだよ。熱が下がってから振り返ると、凄く恥ずかしい…黒歴史みたいな思い出になると思うんだ。

「…自分で食べるって」

「駄目だよ」

何で?

「悠理君は病気なんだから。自分で食べちゃ駄目。私が食べさせてあげるから大丈夫だよ」

何だよ、その理屈は?

病気でも、自分で食べられるなら自分で食べるっての。

「はい、ほら。あーん。あ、ふーふーしてなかった。ふーふー」

「…あのな、寿々花さん…。確かに熱はあるけど、でも、自分で食べられ、」

「はい、あーん。どうぞー悠理君」

「…」

…寿々花さん、なんかさっきから…あんた、ちょっと楽しそうじゃね?

俺がそう見えてるだけか?気の所為なのか?

「…自分で食べるって」

「もー、我儘言っちゃ駄目だよ。ちゃんと食べないと元気にならないんだからね」

何故、俺が駄々っ子扱いされているのか。

解せない。

「悠理君はお熱があるんだから、こんなときくらい頼ってくれて良いんだよ?」

「…」

珍しく。本当に珍しく、寿々花さんが至極真っ当なことを言うもんだから。

…つい、何も言い返せない。

だからって、良い歳して、人に食べさせてもらうってのはどうなんだ…?

…あぁ、考えれば考えるほど、頭が痛い。

ただでさえ頭痛がするっていうのに、もう付き合ってやれないや。

…と、いう訳で。

「はい、悠理君。あーん」

「…どうも…」

もう、どうにでもなれ。

食べますよ。大人しく。食べれば良いんだろ。

看病、どうもありがとうございますね。
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