アンハッピー・ウエディング〜後編〜
言うまでもなく、雛堂と乙無である。
どうやら、来客はこの二人だったらしい。
「…何だ…。あんたらかよ…」
「何だとは何だよ。友達が見舞いに来たら嬉しいだろ?」
円城寺じゃなくて良かった、とは思ってるよ。
「あ、そうだ。飲み物。飲み物持ってくるねー」
「お構いなく」
俺の寝室まで雛堂と乙無の二人を案内した寿々花さんは、来客に飲み物を用意しにキッチンに向かった。
雛堂は、そんな寿々花さんの後ろ姿を眺めながら。
「いやー、ビビッたよ。さっき玄関で、いきなり『うちは要りません』って言われてさ」
「…」
「ついでに塩を撒かれそうになりました。この家では、来客には塩を撒くのが挨拶なんですか?」
「…ごめん」
それ、俺のせいだわ。完全に。
いや、でも寿々花さんも悪いって。「要りません」と言って追い返せって言ったのはセールスだ。
塩を撒いて追い返すのは円城寺。
他の客は追い返さなくて良いんだって。
後で、ちゃんと寿々花さんに教え直さないと…。
…ダルいから、熱下がってからで良いかな。
「…それで、二人はどうしたんだ…?放課後だろ、今…」
「ご挨拶ですね。あなたがバレーボールの最中に鼻血噴き出して倒れるから、心配して様子を見に来てあげたんじゃないんですか」
「…」
「そーだそーだ。しかも、そのまま早退って。制服は更衣室に置きっぱなしだし、鞄だの教科書だのもぜーんぶ、教室に置き去りだしさぁ」
「…」
「誰かが届けないと、明日困るだろうと思って。二人で届けに来たんです」
乙無はそう言って、俺の学生鞄と、制服が入った紙袋を机に置いた。
…友情って、素晴らしいな。
「…ごめん…」
そういや、忘れてたよ。制服と鞄のこと。
体操服に着替えたまま、身一つで帰ってきたからな。
制服も荷物も、全部学校に置き去りなんだった。
二人が届けてくれなかったら、熱が下がった後、体操服で登校しなきゃいけないところだった。
「本当、ごめん…。迷惑かけたな…」
「いやー、良いってことよ。自分も乙無の兄さんも、どうせ暇だったし。なぁ?」
「一緒にしないでください。僕は暇じゃないですよ。今日の放課後は、邪神イングレア様の為に罪の器を満たし…」
「ほら、星見の兄さんちって、二人暮らしじゃん?こういうときは誰かに頼らなきゃキツいかなーって」
…そうだな。
仰る通りだ。
「ついでに、帰りにドラッグストアに寄ってさぁ。必要そうなもの、乙無の兄さんと適当に選んで買ってきたんだけど…。要る?」
え?
「ほら、乙無の兄さん。さっき買ってきた奴出して」
「あなた今、ナチュラルに僕の話をスルーしたでしょう」
「良いから、良いから。分かったってつみ?ツナ?の器がどーたら言う話だろ?」
「聞いてないじゃないですか、全然…。全く、イングレア様より賜った崇高なる使命を何だと思って…」
ぶつぶつと文句を言いながら、乙無は買ってきたばかりの、ドラッグストアのロゴが入ったビニール袋を取り出した。
どうやら、来客はこの二人だったらしい。
「…何だ…。あんたらかよ…」
「何だとは何だよ。友達が見舞いに来たら嬉しいだろ?」
円城寺じゃなくて良かった、とは思ってるよ。
「あ、そうだ。飲み物。飲み物持ってくるねー」
「お構いなく」
俺の寝室まで雛堂と乙無の二人を案内した寿々花さんは、来客に飲み物を用意しにキッチンに向かった。
雛堂は、そんな寿々花さんの後ろ姿を眺めながら。
「いやー、ビビッたよ。さっき玄関で、いきなり『うちは要りません』って言われてさ」
「…」
「ついでに塩を撒かれそうになりました。この家では、来客には塩を撒くのが挨拶なんですか?」
「…ごめん」
それ、俺のせいだわ。完全に。
いや、でも寿々花さんも悪いって。「要りません」と言って追い返せって言ったのはセールスだ。
塩を撒いて追い返すのは円城寺。
他の客は追い返さなくて良いんだって。
後で、ちゃんと寿々花さんに教え直さないと…。
…ダルいから、熱下がってからで良いかな。
「…それで、二人はどうしたんだ…?放課後だろ、今…」
「ご挨拶ですね。あなたがバレーボールの最中に鼻血噴き出して倒れるから、心配して様子を見に来てあげたんじゃないんですか」
「…」
「そーだそーだ。しかも、そのまま早退って。制服は更衣室に置きっぱなしだし、鞄だの教科書だのもぜーんぶ、教室に置き去りだしさぁ」
「…」
「誰かが届けないと、明日困るだろうと思って。二人で届けに来たんです」
乙無はそう言って、俺の学生鞄と、制服が入った紙袋を机に置いた。
…友情って、素晴らしいな。
「…ごめん…」
そういや、忘れてたよ。制服と鞄のこと。
体操服に着替えたまま、身一つで帰ってきたからな。
制服も荷物も、全部学校に置き去りなんだった。
二人が届けてくれなかったら、熱が下がった後、体操服で登校しなきゃいけないところだった。
「本当、ごめん…。迷惑かけたな…」
「いやー、良いってことよ。自分も乙無の兄さんも、どうせ暇だったし。なぁ?」
「一緒にしないでください。僕は暇じゃないですよ。今日の放課後は、邪神イングレア様の為に罪の器を満たし…」
「ほら、星見の兄さんちって、二人暮らしじゃん?こういうときは誰かに頼らなきゃキツいかなーって」
…そうだな。
仰る通りだ。
「ついでに、帰りにドラッグストアに寄ってさぁ。必要そうなもの、乙無の兄さんと適当に選んで買ってきたんだけど…。要る?」
え?
「ほら、乙無の兄さん。さっき買ってきた奴出して」
「あなた今、ナチュラルに僕の話をスルーしたでしょう」
「良いから、良いから。分かったってつみ?ツナ?の器がどーたら言う話だろ?」
「聞いてないじゃないですか、全然…。全く、イングレア様より賜った崇高なる使命を何だと思って…」
ぶつぶつと文句を言いながら、乙無は買ってきたばかりの、ドラッグストアのロゴが入ったビニール袋を取り出した。