アンハッピー・ウエディング〜後編〜
インスタントラーメンの粉末スープと、袋麺の麺だけを砕いたものを出されたら、普通ドン引きすると思うけど。

雛堂も乙無も、ぎょっとするどころか。

「マジで?めっちゃ良い匂いじゃん、それ。いただきまーす」

ずぞぞ、とマグカップのスープを啜っていた。

…あんたって奴は。少しは躊躇えよ。

しかも。

「何だこれ。うっま!めちゃ美味いんだけど」

…美味いのか、それ。

「味噌味が濃厚なのに、まろやかでさらっとしてて飲みやすい。これ、このまま商品化したら売れるんじゃね?」

…そこまで言う?

寿々花さんの為に気を遣っているのか…。

しかし、雛堂だけではなく乙無も。

「うん、イケますねこれ。新感覚スナックって感じで」

インスタントラーメンの麺で作った、寿々花さんのオリジナルスナックを。

乙無は、ポリポリと摘んでいた。

「うっわ、本当だ。何これ。やめられない止まらない」

そんな、某スナック菓子の宣伝みたいな。

「私の自信作なんだー。最近は悠理君がご飯作ってくれるから、めっきり作らなくなってたけど…」

「めっちゃ美味いよ、これ。やべーって」

「長年研究したからね。インスタントラーメンのアレンジレシピなら、他にも色々あるんだー」

…寿々花さんの、無駄な才能が遺憾なく発揮されている。

いや、無駄じゃないけど。無駄ではないけど…。

自慢して良いのか悪いのか、ギリギリのラインって感じだな。

「ごっそさん。いやー、良いもの食わしてもらったよ。料理上手なフィアンセがいて羨ましいよ、星見の兄さん」

「そ…そう、か…?」

違うんだよ。今回は奇跡的に…インスタントラーメンに関する料理だから、奇跡的に成功してるけど。

他の料理は駄目なんだって。魔女の秘薬みたいなもの作ってたことあるから。

「僕らは良いとして、悠理さんは、あれから何か食べました?お昼何も食べてませんでしたから」

「あ、あぁ…。さっき寿々花さんが、そのインスタントラーメンでアレンジ雑炊作ってくれて…」

「マジかよ。嫁ちゃんの手料理を食べさせてもらえるなんて…。自分も風邪引きてぇ!」

「あなたはフィアンセなんていないんですから、いくら風邪を引いても手料理なんて食べられないでしょう」

「そうだった、ちくしょー!格差社会だ!」

…何言ってんだ、雛堂は。

あんたがもし風邪を引いたら、代わりに俺が手料理作って持っていってやるよ。それで満足してくれ。

「で、あーんして食べさせてもらったのか?」

ぎくっ。

突然何を聞き出すんだ。

「そ、そんな訳、な、ない、」

「うん。ちゃんとふーふーして、あーんして食べさせてあげたんだよ」

寿々花さん、あんた余計なこと言うなって。

しかも、そんな胸を張って言うようなことじゃないから。
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