アンハッピー・ウエディング〜後編〜
何とも心地良い気分のまま、眠りに落ちると。

夢の中にも、寿々花さんが出てきてくれた。

何処か遠くから、寿々花さんの調子っぱずれな子守唄が聞こえてきたような気がする。

…そして。

「…ん…」

気がつくと、窓の外から朝の日差しが差し込み。

小鳥達が、ちゅんちゅんと朝の合唱をしている声が聞こえてきた。

…あれ。

いつの間にか眠りについて…そのまま、朝を迎えてしまったようだ。

「…」

俺は恐る恐る、ゆっくりと額に手を置いた。

ひんやりとした冷たいものが、顔の上に乗っていた。

いつの間にか、両頬と額の、合計三箇所に冷却シート…冷えピタが貼ってあるではないか。

寝ている間に、寿々花さんが貼っつけていってくれたらしい。

おでこに貼るのは分かるけど、何で頬にまで貼るんだ?

…まぁ、良いけど。

冷却シートはまだひんやりと冷たくて、何度もこまめに取り替えてくれたことが窺えた。

その献身的な看病のお陰か。

「…」

俺は恐る恐る、ゆっくりと上半身を起こしてみた。

昨日寝る前は、あんなに身体がダルくてしんどくて、頭も喉も痛かったのに。

魔法でもかかったように、あのダルさが一晩にして消えている。

一晩経ったら治るだろ、と楽観視していたが…。

まさか、本当に一晩で治るとは。

凄いな、病院の薬。寝る前に39度も熱があったのが嘘みたいだ。

今では、僅かに頭痛と頭重感が残っているだけ。

ほとんど治りかけていると言って良いだろう。

これなら、今日はもう普通に過ごして良さそうだな。

幸い、今日は土曜日。明日も日曜で学校は休みだし。

土日で身体を休めて、月曜日から登校だな。

まずは、早速起きて着替えよう、と。

思って、ベッドから起き上がろうとした時に、気がついた。

「うわっ…」

「…zzz…」

シーツに突っ伏すようにして、眠っている寿々花さんの存在に。
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