アンハッピー・ウエディング〜後編〜
とりあえず、余計な手間を増やされると困るからさ。

掃除と洗濯には決して手を出さないよう、しっかり言い含めておいた。

寿々花さんは、大層残念がっていた。「私だってお掃除もお洗濯も出来るのに」って。

あんた、階段でバケツを引っくり返したこと、もう忘れたのか?

つーか、掃除と洗濯をしたかったのに、って落ち込むお嬢様って何なんだ。

朝食は、昨日雛堂と乙無が買ってきてくれた、レトルトのお粥とゼリーを食べたが。

昼食は、また寿々花さんが作ってくれた。

どんなものが食べたいかと聞くので、出来ればあっさりしたものが食べたい、と答えたところ。

インスタントラーメンを冷やし中華みたいにアレンジし、レモンと梅肉ソースを利かせた、さっぱりとした一品が出てきた。

まさか、インスタントラーメンをこんな風にアレンジするとは。

レモンと梅肉ソースの酸味が、食欲をそそる。

びっくりするくらい美味しくて、それ以上にびっくりしたのは、そのなんちゃって冷やし中華を作ったのが、寿々花さんだという事実だった。

レシピを考案したのも、寿々花さんなんだって。

毎日インスタントラーメン漬けで生きてた頃に、色々考案したアレンジインスタントラーメンレシピの一つらしい。

昨日の夜のおじやと言い、本当に寿々花さんが作ったのが疑わしく。

実際に、作っているところをキッチンで見せてもらった。

本当に、ちゃんと寿々花さんが作ってたよ。マジで。紛れもなく。

昨日まで、ワンチャン寿々花さんが影武者を雇った説を疑っていたが。

その疑いは、俺の目の前で晴らされた。

疑ってごめん。本当に寿々花さん作の手料理だったよ。

「美味しい?悠理君」

「…あぁ。めっちゃ美味い…」

「良かったー。悠理君みたいに、色んな美味しい料理を作れたら良かったんだけど…」

いや、こんなに美味しいインスタントラーメンアレンジレシピを作れるなら、もうそれだけで充分だろ。

俺、今回の件で寿々花さんのこと、一回りも二回りも見直したよ。

インスタントラーメンのアレンジなら、こんなに絶品の料理を作れるのに。

何で、他の料理はてんで駄目なんだろうな?

偏ってるよなぁ、変な方向に…。

四つ葉のクローバーを見つける特技と言い、今回のインスタントラーメンアレンジレシピと言い…。

寿々花さんの特技は、妙に尖ってるって言うか…。

得意なこととそうじゃないことの落差が、めちゃくちゃ激しいよな。

それでも、得意なことがあるのは良いことだ。

今回は、そのお陰で助かったからな。

寿々花さんに言われた通り、その日も一日、大人しくベッドで休んで。

土曜日の夜には、熱もすっかり平熱に戻っていた。
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