アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「…つーか、雛堂はまだかよ?」

「待ち合わせ時間過ぎてますけど、まだ来てませんね」

腕時計を見ると、確かに待ち合わせ時間から5分くらい過ぎていた。

本当だ。遅刻してんじゃん。

言い出しっぺが遅刻って、どういうことだ?

しかも、遅刻の連絡もない。

遅れるなら遅れるって、メールか電話の一本でも寄越すのが筋ってもんだろう?

あいつが来ないなら、もう帰ってやろうか。

…と思ったが、寿々花さんが楽しみにしてるみたいだから、帰る訳にもいかず。

そのまま、数分待っていると。

「ごめーん。遅れちった〜!」

雛堂が、息を切らして走ってきた。

一応駆け足で来たから、許してやるよ。

遅れた癖に優雅に歩いてきたら、嫌味の二つ三つくらい言ってやるつもりだった。

「おせーよ…。何やってたんだよ」

「これでも大変だったんだぜ?出掛けにうちのチビ共が、自分もお化け屋敷行きたい〜って喚いてさ。振り切るのに手間取ったんだわ」

そんなことが。

寝坊とかうっかりじゃなくて、ちゃんと間に合うように家を出ようとしてたんだな。

それは仕方ない。

じゃあ良いよ。許す。

「全員揃ったことだし、行こうぜ」

「おう!…しかし、星見の兄さん」

「あ?」

「遠くから見たら、マジで美男美女カップルが仲良くデートしてるように見えたぞ」

…は?

突然何言ってんだ、こいつ。

「畜生、羨ましいよなぁ。なぁ乙無の兄さん。今どんな気持ち?美男美女カップルに挟まれた非リア充の気持ち?」

「全く興味ありませんね」

「分かる分かる、自分も今、必死にそう言い聞かせてるからさ。見せつけてくれるよなぁ、格の差って奴を」

…本当に何言ってんの?雛堂は。

暑さで頭トチ狂ったんじゃないのか。

「…びなんびじょ?って誰のこと?」

これには、寿々花さんもきょとんと首を傾げている。

「さぁな…。俺にも分からん」

好き勝手言ってろよ。全く。

そんなことはどうでも良いから、混み合う前にさっさと行くぞ。
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