アンハッピー・ウエディング〜後編〜
全く、何やってんだろうな。俺。

寿々花さんが風邪を引こうと怪我をしようと、体調を崩したって俺には関係ない…はずだったのに。

たかが風邪を引いたくらいで、心配で授業もまともに受けられず。

それどころか、言い訳をして学校を早退してまで、様子を見に帰るだなんて。

我ながら、本当、何やってんだろうって思うよ。

でも、仕方ないだろ?

俺は寿々花さんの世話係なのであって…。寿々花さんの体調に気を配るのも、俺の役目。

下手に風邪を拗らせて入院沙汰にでも鳴ったは、俺の監督責任が問われる訳で…。

それにほら、そもそも、風邪を感染したのは俺のせいだから。

だから、俺も知らんぷりはしていられないんだよ。

自分だって看病してもらったんだから、その分の恩返しはしないといけないし…。

などなど、頭の中で色々言い訳を並べながら。

早足で、いや、駆け足で帰宅。

大人しくしてるよな?大人しく、ちゃんとベッドでやすん、

「あれ?悠理君だ。早かったね。お帰りー」

「…何やってんの?」

…寿々花さんは、自分の部屋のベッドで休んでいる…どころか。

リビングのソファに座って、クッションを抱いて、テレビの画面を見つめていた。

画面には、人間とエイリアンのキメラみたいな化け物が、「ギシャァァァ!」と奇声をあげながら。

逃げ惑う人間達を追いかけ回し、掴み掛かって襲いかかっているシーンが映し出されていた。

びっ…びったぁ…。突然出てくんなよ。

何処からどう見ても、ホラー映画。

…何をやってんだよ。この人は。

「今日、お昼までしか授業なかったの?」

ずびっ、と鼻を啜りながら、寿々花さんが聞いた。

「…いいや。授業は普通にあったんだけど…早退してきた」

「え、早退?何で?またお熱出ちゃったの?」
 
「違うよ。そうじゃなくて寿々花さんが…」

「…私?」

「…」

寿々花さんのことが心配で、何も手につかなかったから…なんて。

何だか小っ恥ずかしい気がして、言えなかった。

…べ、別に。自分の監督責任を問われるのが嫌だったから、戻ってきただけだっての。

それに、言わんこっちゃないじゃないか。

「そ、それより何をやってるんだよ、あんたは」

「ふぇ?…映画観てるの」

…そうだろうよ。

全く、ちょっと目を離したらこれだ。

早退してきて、本当に良かった。英断だったよ。

俺はおもむろに、テーブルの上に置かれたテレビのリモコンに手を伸ばし。

無情に、OFFボタンを押した。

ブチッ、と切れる画面。

「あぁっ!悠理君酷い。今良いところだったのに〜」

何が良いところだよ。エイリアンが人間を襲ってたじゃないか。

あんなものを見てたら、元気な人でも体調が悪くなりそうなのに。

ましてや、ただでさえ体調の悪い人間が見るようなものじゃない。
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