アンハッピー・ウエディング〜後編〜
…大体。

「言わんこっちゃない。このアホ、自分の部屋で寝てろって言っただろ!?」

何で起きてるんだよ。普通に。

朝、折角宥めすかしてベッドに戻らせたのに。

俺がいなくなった途端、また起き上がってたんじゃ意味ないだろ。

「いつから起きてたんだ?この映画、何時から観始めたんだ」

「え?その映画は30分…40分前かなぁ?その前は別の映画を観てたよ」

「…」

「ほら、これ。エイリアンが地球を侵略して、乗っ取っちゃうお話だったんだー」

「…」

「お絵描きもしたんだよ、ほら。さっき観た映画のエイリアンを描いたんだー」

スケッチブックに、クレヨンで描いたエイリアンを見せてくれた。

エイリアンっつーか…のっぺらぼうの棒人間みたいだけど…。

…そんなことはどうでも良い。

「悠理君も一緒に観る?凄く面白かっ、」

「…どうやらあんたは、余程俺を怒らせたいらしいな?」

「えっ。悠理君が怒ってる。何で…?」

何で、じゃないんだよ。

俺がちょっと目を離したらこれだ。言わんこっちゃない。

「今すぐベッドに戻れ!」

誰が呑気にホラー映画を観てろと言った。遊ぶ為に学校休ませたんじゃないぞ。

「熱がある癖に、何でそんなに元気なんだよ?寝てろって!」

「だって、ただ寝てるだけなのは退屈なんだもん…」

子供かよ。いや、子供だったな。

「だからって起きてて良い訳ないだろ?眠れなくても良いから、横になって大人しくしてろ」

「それに、身体がぽかぽかして暑かったから、怖い映画を観たら涼しくなって、熱も下がるんじゃないかなぁと思って」

成程、寿々花さんなりに熱を下げる方法を探してたんだな。

それは感心…な、訳ないだろ。

そんなやり方で熱が下がってたまるか。

「良いから。い、い、か、ら!今すぐベッドに戻る!そして寝ろ!」

「うぇ〜…?」

「異論は認めん!」

散らかしたリビングは、今日は特別に俺が片付けといてやる。

だから、寿々花さんは今すぐ寝ろ。

今日の俺は優しくないからな。しっかり言うこと聞いてもらうぞ。

あんたの看病の為に、わざわざ学校を早退してきたんだから。

「うぅ〜…。悠理君が、いつになく横暴…」

「好きに言ってろ」

そして、早く寝ろ。

俺は、無理矢理寿々花さんを寝室に強制連行。そのままベッドに横たわらせた。

よし。

「良いか、また勝手に動こうものなら、次はロープを持ってきて、ベッドにぐるぐる巻きにしてやるからな」

「やっぱり、横暴…」

好きに言ってろ。

え?荒療治が過ぎる?

うるせぇ。これが俺の「看病」だ。

文句があるなら、さっさと寝て、風邪を治すことだな。

「後で、また様子を見に来るからな。ちゃんと大人しく寝てるんだぞ。分かったな?」

「えー…」

「…やっぱり簀巻きにされたいか?」

「ひぇっ。寝る、寝まーす」

よし、それで良い。

全く、油断も隙もあったもんじゃない。
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