アンハッピー・ウエディング〜後編〜
そのまま、およそ一時間経過。

この一時間の間、寿々花さんが散らかしたリビングを片付けたり、台所に立ったり。

更にその合間を縫って、抜き打ちチェックとばかりに、何度かこっそり寿々花さんの様子を見に行った。
 
俺が見てない隙に、また起き上がって遊んてんじゃないかと思って。

今度また勝手に起きて遊んだりしたら、宣言通りベッドにぐるぐる巻きにするつもりだった。

俺はやると言ったらやる男だからな。

しかし、幸いなことにその必要はなく。

寿々花さんは渋々、嫌々ながらも、ちゃんとベッドに横になっていた。

ってか、何だかんだ身体しんどいんだと思う。まだ熱があるようだったし。

よくもまぁ、熱があるのにホラー映画なんか観ていられたもんだ。

とにかく、大人しくしているならそれで良し。
 




…そして、学校が昼休みを迎える頃。

「寿々花さん、起きてるか?」

「…ふぇ?」

俺は再度、寿々花さんの寝室を訪ねた。

大人しく寝ていたようで何より。

起こして申し訳ないが。

「昼だけど、何か食べるか?」

それを聞こうと思って。

「俺は寿々花さんみたいに、インスタントラーメンのアレンジ料理なんて作れないけど…。リクエストがあるなら聞くぞ」

お粥とかうどんとかそうめんとか、そういうものなら作れる。

食欲があれば、大好きなオムライスでも良いぞ。

…しかし。

「んー…。あんまり欲しくないな…」

…珍しい。

寿々花さんが、大好物のオムライスさえ食べたがらないとは。

もしかして、これ結構重症なのでは?

だから、ホラー映画なんか観てる場合じゃないって言ったんだよ。
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