アンハッピー・ウエディング〜後編〜
「食べられそうにないか?じゃあ、アイスクリームとか…ゼリーとか」

アイスクリーム、好きだろ?寿々花さんは。

食欲がなくても、甘いものなら何とか…。

…と、思ったが。

「うーん…。…要らない…」

…やっぱり重症じゃね?

いくら具合悪くてもさ…。何か食べた方が良いと思うんだよ。

でも…食べたくないのに無理に食べて、気持ち悪くなったら本末転倒だし…。

「…」

しばし考え、キッチンに向かった。

大きめのマグカップに牛乳を入れ、すり下ろした生姜と、蜂蜜をスプーン1杯。

…よし、これで出来上がり。

そのマグカップを、寿々花さんのもとに持っていった。

「寿々花さん、これならどうだ?」

「…ふぇ?」

「ホットミルクに生姜と蜂蜜入れたものなんだけど…」 
 
固形物は食べられなくても、飲み物なら行けるんじゃないかと思って。

何も食べないよりはマシだろ。

生姜が入ってるから、血行促進効果も期待出来る。

「…ごくん。…温かくて、美味しい」

良かった。

「やっぱり、悠理君の料理は何でも美味しいね」

「褒めてくれてありがとう…と言いたいところだが、別に俺のオリジナルレシピって訳じゃないから」

強いて言うなら、俺じゃなくて俺の母さんのレシピだな。

我が家では昔から、風邪を引いたときはこれだった。

俺にとってはお袋の味…と言うのも、まぁ大袈裟だな。

ジンジャーミルクなんて、さして珍しいレシピでもない。

「それ飲んだら、風邪薬飲んで寝るんだぞ」

「おくすり…苦くて飲めない〜…」

我儘を言うんじゃない。良薬口に苦しだろ。

今度寿々花さん用に、服薬ゼリーを買ってきておくよ。

「ほら、我慢して。頑張って飲め」

「う〜…」

いかにも、苦いです、と言わんばかりの苦々しい顔。

それでも。

「…ごくん」

よし、ちゃんと飲んだな。それで良い。

「うぇ〜。口の中が苦い…。でも頑張って飲んだよ」

「よしよし。偉いぞ」

あとは、寝てるだけで治るだろう…。…多分。

大人しく寝てれば、の話だけどな。

「さぁ、横になって休め。勝手に起きるんじゃないぞ」

「えー。退屈…」

「我儘言うんじゃない。大人しくしてないと、治るものも治らないだろ?早く治さないと、また風邪薬飲まないといけなくなるぞ」

「うぅ…。それは嫌だ。仕方ない…」

余程、風邪薬を飲みたくなかったようで。

渋々ながら、大人しく横になってタオルケットを被った。

よし、それで良い。そのまま起きるなよ。

「じゃ、俺はリビングにいるから…何かあったら呼んでくれ」

「うん…」

…心配だから、ちょくちょく様子見に来よう。
< 98 / 645 >

この作品をシェア

pagetop