アンハッピー・ウエディング〜後編〜
それから夜になるまで、何度も寿々花さんの部屋を訪ねては、様子を確認した。

勝手に起き上がってたら、マジで簀巻きの刑にするつもりだった。

…の、だが。

「…zzz…」 

風邪薬のお陰か、ぐっすり眠っている。

どうやら、簀巻きにする必要はなさそうだ。

このまま、ゆっくり休んでくれ。

朝になったら、多分少しは熱も下がっているだろう。

やれやれ、世話が焼ける…。

…と思ったけど、先に風邪を感染したの俺だから、文句言えないや。

元はと言えば俺のせいだよな。ごめん。

その代わり、手厚く看病させてもらうから許してくれ。
 
何度目かの寿々花さんの寝室への訪問で、眠っている寿々花さんの額に、冷却シートを乗せてから。

俺は、起こさないようにそっと部屋を出た。

あとは、何か食べられると良いんだが。結局ホットミルクしか飲んでないから…。 

何なら食べられるだろう?やっぱりお粥とかうどんとか、そういうあっさり食べられるものの方が良いかな…。

あれこれと考えていた俺のもとに、突如、スマホに着信。

びっくりした。

慌ててスマホを掴み、画面をタップする。

突然鳴るんじゃねぇ。寿々花さんが起きてしまうじゃないか。

マナーモードにしておけば良かった。

そして、電話を掛けてきたのは。

「…もしもし?」

『よー。星見の兄さん。元気してる?』

雛堂だった。

何で雛堂から電話が…と思ったけど、時計をよく見たら、時刻は既に放課後になっていた。

もうこんな時間かよ。
 
「俺は元気だけどさ…」

『無月院の姉さんが元気じゃないんだろ。どう?看病してる?』

「してるよ」

『献身的だなー。看病して、看病されて…。畜生、羨ましいぜリア充共がよ』

…そんな下らないこと言う為に、わざわざ掛けてきたのか?

切るぞ。

すると、電話の向こうから乙無の声が。

『そんなことより、大也さん』

『そんなことって何だよ?大事なことじゃん!』

『あなたの醜い嫉妬はどうでも良いんですよ…。…それより、用件を先に言ったらどうです?』

…用件?

って、何?

『ちぇっ、分かったよ…』 

「何だよ、用件って」

『別に大したことじゃねーよ。必要なものあったら買っていくけど、なんかある?』

非常に有り難い申し出。

俺一人じゃ、買い物に出たくても寿々花さんを置き去りには出来ないからな。

…とはいえ。

昨日、色々買い物済ませてきたばっかりだからな…。一応、まだ大丈夫そうだ。

「いや…。大丈夫だよ、ありがとう」

『なんも要らねーの?だいじょぶ?』

「あぁ、大丈夫。気ぃ遣わせて悪いな…」

『おぉ、良いってことよ。このお礼は5倍返しにして、しっかりしてもらうから』

…増えてね?

最初3倍だっただろ。

まぁ…世話になってる身だから、文句言えねぇけど。
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