再会溺愛〜夢の一夜の証と共に〜
 綺麗にセットされた髪に、ドレスアップされたワンピース。でも、女性の表情が服装の華やかさとは真逆で今にも泣き出しそうなのだ。ベンチに座って夜空を見上げているのだが、今にも消えてしまいそうなくらい儚い……。

 見合いの間中、ずっと彼女を見ていた。苦痛だった時間が、その女性を見ているだけで、癒される。

 途中、何度か話を振られるも、うわの空で答えていたと思う。相手の女性の顔が、見合いが終わるころには険しくなっていた。それはそうだろう。それでいいのだ。

「壱夜、恵さんと二人で話をしたらどうだ?」
「お断りします」

 俺の言葉に、見合い相手の親子は怒って帰ってしまった。

「お前……」
「最初に言ったよな。結婚する気がないから相手に失礼だって」
「それはそうだが、もう少し話をしてみたら良かっただろう?」
「時間の無駄だ。これで最後にしてくれ」

 これ以上、見合いを持って来られたら迷惑だとはっきり主張した。



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