再会溺愛〜夢の一夜の証と共に〜
 外見も立派だが、院内は更に豪華で病院とは思えない。

「私が知っている病院とは全く違います」
「出産って、女性にとっては一生に何度かしかない、命を掛けた大仕事だと思うの。もちろん新たな命の誕生に喜ぶ瞬間ではあるけれど、出産がゴールではなく子育ての始まりなの。だから、退院するまでの僅かな時間だけでも、疲れを癒して優雅に過ごしてほしいと思っているのよ」
「そうですよね。無事出産して終わりではないですよね。本当に大変なのはその後ですよね」
「そうなの。だから、せめてここにいる間だけでもゆっくり過ごしてほしいの」

 店長の人柄がご主人の人柄に繋がっていることがよくわかる。豪華なだけではなく温かい雰囲気が、私の心まで温かくしてくれるようだ。

 五階建ての最上階の最奥の医院長室の前までやって来た。ご主人にお会いするドキドキと病気ではないかと思う不安が最高潮に達する。

「『コンコン』あなた、私よ」
「ああ、どうぞ」
「ただいま。お客様を連れて来たの」


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