α御曹司に囚われた夜 ~αなのにヒートが起きて、好きでもない社長にいただかれました~



 興信所に私の周辺を探るように頼んだ。



 私は威圧アタックを受けているのだ。それも気づかないほどの微弱な威圧アタックを。αのΩ化の過程を考えるうちに、そう思うに至った。Ω化の威圧アタックとはそうしたものなのではないか。だから数年も数十年もかかる。

 それならば私の周辺を私に気づかれないように、うろつているαがいるだろう。

 そして、実家の動向も調査に加えた。



 敵対するα。それで思い浮かんだのは弟だった。私に深い恨みを持っている。

 弟の憎悪に歪んだ顔。

 弟はサイコパスだった。優れた頭脳に、恵まれた肉体を持つα。それだけに厄介だった。



 私の父はαで、αの中でも上位のαだった。βの母と結婚して、私が産まれた。父は、母が妊娠中に、Ωとヒート事故を起こしてしまった。



 数年後、ヒート事故の相手が子を産んでいたことがわかり、母は出て行った。私を置いて。

 ときにβは、αやΩの性を嫌う。βにしてみればヒートだのラットだの、動物的で気持ちが悪いのかもしれない。

 おそらく、母も、αやΩが嫌になったのだ。αの子は、αになる可能性がある。それで、私のことも置いて、出て行った。



 母が出て行ったあと、ヒート事故の相手が、弟を連れて、家に入ってきた。

 すんなり夫婦に収まったことからして、案外、ヒート事故ではなく、単に不倫から愛人に収まっていたのかもしれない。



 上位のαなら、愛人を持つことは珍しくはない。というよりもステイタスと見る向きもある。父は少しも悪びれていなかった。



 父の傲慢なαとしての資質は、αとして生まれた弟にも引き継がれていた。

 弟は、そのうえ、残酷だった。いつも仲間を引き連れて歩く、残虐な王様だった。



 私のことを姉と思うどころか、獲物と思っている節もあった。

 しかし、大人の前では品行方正で、優等生の皮をかぶっていた。



< 15 / 26 >

この作品をシェア

pagetop