α御曹司に囚われた夜 ~αなのにヒートが起きて、好きでもない社長にいただかれました~
バーに入るなり、女の子たちの注目を浴びた。緊張に足が竦むところをぐっとこらえて、背筋を伸ばしてカウンターにつく。目だけはしっかりと周囲を観察しており、そのなかに、好みの子を見つけていた。
その子に向けてチラチラと視線を送る。目が合えば、にっこりと微笑む。
それを合図にその女の子はやってきた。
近くで見ても可愛い。
アイドルのような顔立ちに、ふわふわしたピンクのレースのワンピースを着込んでいる。
ポニーテールの髪は、茶色で柔らかそうで、そんなところも私のドストライクだ。
その子は上目遣いで言ってきた。
「お姉さん、きれい」
「ふふ、あなたはとっても可愛いわ。私、冴姫。あなたは?」
私はカウンターに片肘をついて、流し目を送ってみせた。
「私のことはMって呼んで」
「へえ、それって、性指向と関係あるのかしら」
「確かめてみたい?」
こんなどぎつい会話に胸を弾ませる。性指向がMでも、こんな可愛い子をいじめたくはないが、経験豊富そうだ。初めての相手としては申し分ないような気がした。
きわどい会話を交わしたのち、二人でバーを出る。
タクシーの中で外資系ホテルのスイートに予約を取る。
予約を終えると、Mはしなだれかかってきた。首筋をクンクンと嗅いでくるのが子犬のようで可愛い。
「冴姫ちゃん、良い匂い。すごくえっち」
しかし、Mは急に顔をしかめた。そして、もう一度確かめるように匂いを嗅いでくる。
「やだなあ、冴姫ちゃん、αにマーキングされてる」
不意にMはニヤァと笑った。
残酷さを目にたたえていた。
「普通のαなら吐くほど嫌がるだろうけど、私、αにマーキングされたΩを犯すのが大好きなんだよね。誰かの所有物をめちゃくちゃに壊すのは気持ち良いから。吐瀉物ぶっかけながら、壊してあげる」
私は目を見張った。
え…………?
Mの雰囲気が変わっている。可愛い感じが失せて、その目が加虐に光っている。
乱暴に私のドレスの胸元をずりさげた。ドレスの胸元が破れる音がする。
「ちょっと、やめて」
抵抗する私に構わず、Mは私を抑え込んだ。華奢に見えていたのに力は恐ろしく強い。
ブラジャーも一緒に下がり、胸があらわになった。私の胸にMは飛びついてきた。胸に濡れた舌が這う。
「あなた、αなの?」
「そうだよ。匂いでわかるでしょ」
確かにMからは甘い匂いが漂っている。しかし、これはMがΩだからではないのか。
その匂いが強まった。胸に歯が当たる。乱暴な噛み方に、恐怖が沸き起こった。
噛みちぎられるのではないか。
「いやっ、やめてっ」
「ふうん、抵抗するんだ、ますます可愛い」
そこで、タクシーの運転手さんから注意が入った。
「お客さん、αとΩでしょ。匂いが困るんですよ。次に客を乗せられなくなる。降りてください」
「あ、そうだね。降りよう。私、上品なホテルより、汚いトイレとかのほうが燃えるんだよね。冴姫ちゃんをそこの公園のトイレで、犯してあげるね」