α御曹司に囚われた夜 ~αなのにヒートが起きて、好きでもない社長にいただかれました~



 Mは勝手に私のバッグから財布を取り出してタクシーに支払った。私を引きずり下ろし、どうやら都立公園に向かって、歩道を引っ張っていく。



「いやっ、やめてっ、ごめんなさい。やっぱりやめてっ」



 Mを突き飛ばして逃げるも、途中で足が動かなくなる。

 これは、威圧………っ?

 頬を殴られたような心地だった。

 威圧は暴力だ。受ければ精神的にもショックを受ける。

 ひどく気がくじけた。



「いや、やめて……、お願い……」



 怖い………。誰か助けて………。

 逃げなきゃ。

 しかし、足は思うように動かない。

 Mが後ろから私を羽交い絞めにした。

 Mはそのほっそりした体のどこにそんな力があるのかわからないほどの強い力で、私を引きずる。

 ただっぴろい公園に連れて行かれる。



「いや……、お願い、やめて……」



 情けないことに涙が出ていた。



「私が怖いの? ああ、なんて、可愛いの! 気の強そうなお姉さんを泣かせるのって、すごく興奮する! 冴姫ちゃん、可愛い。今日の獲物はサイコーだわ!」



 Mは、ほとばしるような声を上げた。それがますます私を怯えさせる。

 いつのまにか、両手を後ろ手に拘束されている。

 私は大声を上げた。



「誰かっ、助けてっ、いやあ――ッ」



 公園に入り、奥のトイレに向かって引きずられる。個室に押し込まれようとするのを精いっぱい抵抗する。

 押し込まれてしまえば、おしまいだ。



「いやああっ、誰かっ、助けてっ」



 いやだっ、怖いっ。

 どうしてこんなことになったの。

 せっかくのドレスは破れ、ヒールもバッグもどこかに行ってる。

 押し込まれようとしたそのとき、突然、足が軽くなった。威圧が解けたのだ。

 Mの後ろに人影があった。



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