天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 ダーレンがこの状態だと知れば、実の母親ならさすがに手を差し伸べるだろう。バックマン公爵夫人が味方につけば、貴族たちの対応も変わるはずだとダーレンは考えた。

 すでに公爵家を出て罪は償ったので、母であるバックマン公爵夫人が以前と変わらない笑顔をダーレンに向けると信じていたのだ。

 腕に絡みつくロベリアを引き連れて、ダーレンはバックマン公爵夫人の元へ向かった。

「母上、ダーレンです。今夜も美し——」
「無礼者。勝手に話しかけないでちょうだい」
「……え?」

 ダーレンは自分の耳を疑う。

「今、なんと……?」
「無礼者と言ったのよ。お前はすでにバックマン公爵家の人間ではありません。そのような者が私に話しかけるのは、不愉快だわ」

 母の豹変ぶりにダーレンは言葉を失った。まさかここまで拒絶されるなんて想像すらしていなかったダーレンは、大きなショックを受けている。隣にいるロベリアも心なしか顔色が悪いような気がしたが、それどころではなかった。

< 102 / 220 >

この作品をシェア

pagetop