天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 国のトップから限りなく命令に近いお願いをされて、どうやって断るか懸命に頭を働かせる。下手にこちらの情報を出してしまったら、それを逆手に取られそうでテオドールのことも迂闊に口にできない。

「恐れ入りますが、悪評がついてまわる私はルシアン様の妃にはふさわしくないと存じます」
「それも昨夜の夜会で確認したが、ルシアンが正しく情報を修正したので其方の評価がかなり変わったのだ。バックマン公爵夫人の尽力もあり、すでに問題ないと結論が出ている」
「そうだよ、リリス。なにも心配ないし、僕の教育係兼婚約者になってくれないかな? 正式な婚約者ならテオドールの入国拒否を取り消せるんだ」
「どういう……ことですか?」

 アマリリスは初めて聞いた情報に戸惑った。テオドールが入国拒否をされていたことは初耳だし、それならアマリリスに会いにこられるはずがない。

 しかし、優秀なテオドールが入国拒否されるようなことをしたとは考えにくかった。

「これは僕も今朝知ったばかりなんだけど、どうやらクレバリー侯爵が手を回したようなんだ。どうやってもエミリオに侯爵家を継がせたかったのだろうね」
「……そうですか。それなら納得ですわ」
「だけど王太子の婚約者の兄なら、それをひっくり返せる」

 ルシアンの言葉はアマリリスの心を揺さぶる。だが、この話に乗れば、もう引き返すことはできない。

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