天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
「リリス」

 猛毒を含むルシアンの甘い囁きが、アマリリスを追い詰めるように言葉を紡ぐ。

「僕の婚約者になれば、テオドールもユアンもこの国に戻ってこられる。他に望みがあるなら、僕がすべて叶えるよ」
「クレバリー侯爵家の使用人たちを王城で雇っていただけますか?」
「そんなことでいいの? お安いご用だ」

 天使のように微笑む冷酷なサイコパスに、アマリリスは陥落寸前だ。兄たちと使用人たちの未来と、アマリリスの自由のどちらが重要か考えて目を閉じた。

(ルシアン様を相手に政略結婚すると思えば割り切れるだろうか。ケヴィンたちの暮らしも保証できるし、兄様たちがこの国へ戻れるなら、まったく興味がないけれど妃教育も頑張れる……か)

 そもそも貴族令嬢なので、幼い頃から家門のために嫁ぐのだと教わっている。アマリリスはようやく腹を括って、そっと目を開けた。

 ルシアンはアマリリスの答えがわかっているのか、嬉しそうに目を細め口角を上げる。手のひらで転がされて悔しい気持ちもあるが、これが最も合理的だとアマリリスは自分に言い聞かせた。

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