天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 クレバリー侯爵とのやり取りを終え、ロベリアは私室へと戻った。扉の前でため息をついてから、笑みを浮かべて室内に足を進める。

 その足音に気が付いて、部屋で待っていたダーレンがロベリアの前まで駆け寄った。

「ロベリア、随分時間がかかったのだな。それで、バックマン公爵家からの返答はどうだった?」
「ダーレン様……どうか落ち着いて聞いてください」

 ロベリアはバックマン公爵家からの返答と、父親が職を斡旋するということを言葉を選びながら伝える。ガックリと項垂れながらダーレンは聞いていた。

「そうか……母上の言葉は事実だったんだな。父上の言葉も大袈裟に言っているだけかと思っていた……」
「そうですわね。ですがダーレン様なら、すぐに出世して認められますわ!」
「ああ、そうだな……」

 肩を落とす婚約者をなんとか励まし、ロベリアは新しい職を得たダーレンに期待した。

(ダーレン様なら血筋もしっかりしているし、きっとすぐに認められて出世していくはずよ。そうしたら高官の妻として社交界に返り咲くわ!)

 少々道は逸れたが、ロベリアは希望的な未来を描いていた。しかしそんな未来は、一カ月もしないうちに幻となる。



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