天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
「リリスは僕の最愛なのはわかってると思うけど、その彼女を傷つけた人間たちがいるんだ」
「あー、そう。そっちの仕事か」
「うん。僕はね、奴らを許す気は毛頭ないんだよ」

 ダーレンはバックマン公爵家から勘当され、クレバリー侯爵家に身を寄せている。強欲な一家ごとまとめて処分しようとルシアンは計画していた。

「ルシアンがそんな風に怒るのを初めて見るな」
「そう?」
「いつも飄々としていて、負の感情とは無縁なのかと思っていた」
「まあ、それはそうなのかもね。リリス以外の人間に興味ないし」
「はあ、はっきり言うねえ……ということは、俺もどうでもいい人間のひとりかよ」

 カッシュもまた王太子を理解している数少ない友人だと思っていたので、ポロッと心の声がこぼれてしまった。女々しい言葉になってしまったが、ルシアンもカッシュを友人だと思ってくれていると信じていたから、ルシアンの言葉はショックだったのだ。

「うーん、カッシュは友人だと思っているけれど、リリスと比べたら——」
「わかった! 比べなくていい。友人だと思っているなら、それでいいんだ」

 カッシュがもう聞きたくないとばかりに言葉を挟んだので、ルシアンもそれ以上は続けなかった。

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