天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 そんなことがあったかとアマリリスは考えた。街中で喜ぶと言ったら、極上のスイーツに舌鼓を打つか、自由を満喫して好きに過ごすくらいだが、それなら夜会できるようなドレスは少々不釣り合いだ。

「まあ、楽しみにしていてよ」

 それだけ言って、ルシアンは車窓へ視線を向けた。

 それから三十分ほどして街の外れにある、東へ向かう乗り合い馬車の乗降口へ着いた。大勢の人が荷物を抱え行き来している。
 アマリリスはルシアンに促され、馬車から降りてエスコートされるまま歩き始めた。

「ルシアン様、ここからどこへ向かうのですか?」
「もう目的地に着くよ。少し待つかもしれないけど」

 ルシアンの意図がまったく読めないアマリリスは困惑するばかりだ。多くの馬車が集まる乗降口は、王都の中心地から外へ向かう馬車と、外から王都へ入ってくる馬車で停車する場所が異なる。渋滞や事故を避けるための措置で、こればかりは王族でもルールに従うしかない。

 王都へ入ってくる馬車の乗降口まで来ると、先に到着していた侍従がルシアンに駆け寄り報告してきた。

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