天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 珍しく感情的なルシアンを目にして、アマリリスは驚いていた。
 ルシアンはガリガリを頭を掻いて、むくれている。でもアマリリスは嬉しくなってしまった。

 いつも本心を覆い隠して心の底が読めないルシアンだったが、アマリリスはやっとその心に触れた気がしたのだ。ルシアンとテオドールのおかげでほぐれた心が、アマリリスの表情にも変化をもたらす。

「ふふふ、私にとっても初めてのルシアン様ですわ」
「っ! リリスはどこまで僕をかき乱すんだろうね?」

 アマリリスの花が咲くような微笑みが心に突き刺さり、一方的に振り回されることにルシアンは苛立ちさえ感じた。紫水晶の瞳が捕食者のようにギラついていることに気が付ついたのは、ルシアンが手のひらがアマリリスの頬に触れたからだ。

「え、ルシアン……様?」
「たまには僕もリリスをかき乱していい?」
「それは、どう——」

 アマリリスの疑問などあっさり無視して、ルシアンは強引に口付けをした。

 柔らかな感触、身体が火照るほどの熱、もっと自分だけを見てほしいと願う想い。
 それがルシアンから伝わってきて、アマリリスの思考が停止する。

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