天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 カッシュはアマリリスの采配に任せているので、なにも口出しをしてこない。ふたりは事前に騎士たちが作成した調書を読んでいるので、それぞれの証言は把握している。

 改めて矛盾がないか、またはマイクロサインが出ないか確かめるため、アマリリスは給仕に問いかけていった。

「では貴方に尋ねます。あの日は何時から会場に来て、誰の指示を受けてロゼシャンパンを配りましたか?」
「はい………ボクは夜会の担当でしたので、15時から会場に入り準備を手伝いました。あの日、会場の担当の割り振りは給仕長がされていて、ボクはシャンパンの係りになりました」

 ここまで、給仕の視線は左上を向いたままだ。話を聞いてくれると思って落ち着いたのか、不安な様子はなくなりスムーズに言葉を紡いでいる。

「私にシャンパンを渡したのは覚えていますか?」
「はい。その真紅の髪が印象的でしたので、覚えていました」

 真っ直ぐに見つめてきた給仕と視線が絡むが、頬を染めてパッと逸らされた。

(視線の絡み方を見ても、嘘をついている様子はないわね)

< 171 / 220 >

この作品をシェア

pagetop