天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
「カッシュ様、この方は大丈夫です。次は給仕長をお願いします」
「かしこまりました」

 こうしてアマリリスは次々と関係者から話を聞き出し、嘘をついている者はいないか調べた。
 それから五人目の会場責任者エドガー・フロストの聞き取りをしていた時だ。

「私はただ王城で開催される夜会の責任者をしていただけです」
「貴方は以前、財務部で勤務していましたね?」
「それがどうしたのですか。部署異動しただけだし、そういうことは珍しくもなんともないでしょう」
「そうですわね」

 アマリリスはエドガーのわずかな挙動を見逃さなかった。
 この時点でもエドガーは『部署異動』というところで瞬きが増え、組んだ足をアマリリスの方へと向けてきた。

(でも、貴方の仕草がなにか隠し事をしていると訴えているのよ。さて、どうやって追い詰めようかしら)

 ギラリと光る琥珀色の瞳は、獲物を狙う肉食動物のようだった。アマリリスは稀代の悪女の名にふさわしい、黒い笑みを浮かべる。

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