天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 身動きひとつせずブリジット伯爵はそう証言し、首元のクラバットを直した。

(ふうん、慌てた様子は見られないけれど、やはり嘘をついているわね。話すことを拒絶して目を閉じていたし、あまりにも視線が合いすぎる。それに微動だにしないなんて、不安や動揺を隠すためだわ)

 人が嘘をつく時、さまざまな反応を見せる。
 目が泳いだり、瞬きが増えたり、ソワソワと落ち着かなくなるものだ。だが、逆にそれらを抑えようとして、身体が少しも動かず、視線を逸らさないのも嘘をついているサインになる。

 最後の最後で気が緩み、ブリジット伯爵は整った状態のクラバットに手を伸ばした。これは以前も嘘をついている時に見せたサインだ。

(移動させたことは認めたけれど、その理由も自己判断も嘘。やはり、カーヴェル公爵が絡んでいる可能性が高いわ。どうやってそこまで情報を引き出そうかしら?)

 アマリリスは高速で思考を巡らせる。
 チラリとカッシュに視線を送ると深く頷き、アマリリスの好きにやっていいと示してくれた。国王からも自由に進めていいと許可を得ていることもあり、アマリリスはここでブリジット伯爵を捕縛する決断をした。

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