天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
(ふふっ、ここは進んで国外追放されましょう)

 もうダーレンの婚約者でないから、エミリオに見つかる前に姿を消すため、今のうちにクレバリー侯爵家から出ていくつもりだった。

 優しくしてくれた使用人たちが心配しないように、ケヴィンのもとを訪れる。今日は伯父たちがパーティーだから、私室で仕事をしながら帰りを待っているはずだ。

 アマリリスはケヴィンの部屋の扉をそっとノックする。

「ケヴィン、忙しいところごめんなさい。今大丈夫かしら?」

 物音がしてすぐに扉が開かれ、ケヴィンが驚いた様子で顔を出した。

「アマリリス様? はい、もちろんです。パーティーから戻られたのですか?」
「もう侯爵家から出ていくわ。これは図書室の鍵よ。みんなにはお世話になったのに、なにも返せなくて申し訳ないけど……ありがとうと伝えてほしいの」
「そんな急すぎます! いったいなにがあったのですか?」
「前から計画してはいたんだけど、さっきダーレン様から婚約破棄されたの。だからこれ以上は……」
「なんということだ……!」

 ケヴィンは両親が健在だった頃からクレバリー侯爵家に仕えてくれている。当然エミリオの(よこしま)な思惑も懸念していた。

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