天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 バックマン公爵夫妻は厳しい方たちなので、ダーレンの勝手な振る舞いを許す可能性も低い。それを見越しての婚約破棄宣言ならばいいけれど、実際はそこまで考えが及んでいないだろう。

 より優秀な次男と三男がバックマン公爵家の後継者になった場合、ダーレンは間違いなくここへやってくる。そうなったらエミリオとの対立も勃発して、侯爵家がどうなるのか想像に難くない。

「逃げられる人はなるべく早く退職して。ケヴィンもいつまでも残っていてはダメよ」
「……アマリリス様がそうおっしゃるのなら、注意深く観察しておきましょう。では、少々お待ちください」

 ケヴィンは一度部屋の中へ戻り、小さな巾着を手に戻ってきた。

「これをお持ちになってください。わずかしか用意できませんでしたが、お役に立つと思います」

 巾着を受け取るとジャリッと音がする。慌てて中を見ると金貨が数十枚入っていた。

「こんな、受け取れないわ! 優しくしてもらっただけで十分よ。お返しもできないのだから……」
「お返しいただかなくて結構です。これは来月のアマリリス様の誕生会を開くための費用でしたから、気にせずお持ちください。これで隣国まで安全に進めるでしょう」

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