天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
 ルシアンの凍てつく視線を浴びたエイドリックは、顔面蒼白で今にも倒れそうだ。カッシュがルシアンに書類の束を差し出しすと、一枚ずつ読み上げていく。

「当時の入国審査員の証言。マイケル・サントンはクレバリー侯爵からテオドール・クレバリーの入国拒否の申請を受けつけた。しかし明確な理由がないため申請を却下すると翌日には部署異動となり、後任にベルナール・トストマンが任命され申請を受理。後日トストマンの借金が一括で返済され、同等の金額がクレバリー侯爵の小切手で換金されている。借金の返済と引き換えに入国拒否の申請を通すように依頼されたとトストマンは証言している」
「そっ、そんなこと……っ!」
「少し前のことだったから調査に少々手間取ったけれど、すべて物的証拠もあるし証言も取れている。思い出したかな?」

 エイドリックはどうやって言い逃れたらいいのか必死に考えているが、頭の中はパニック状態で考えがまとまらない。なぜこんなにも証拠が揃っているのか不思議でたまらないし、トストマンが証言したのが納得できなかった。

「その証拠や証言は捏造ではないのですか!? 八年も前のことです、今更そんなもの——」
「捏造ではありません。小切手の控えは私がクレバリー侯爵家に保管していたものですし、証言はカッシュ様とルシアン様も同席されて聞き出したものです」

 アマリリスはここで口を開いた。
 エイドリックを完膚なきまでに叩き潰すため、クレバリー侯爵家の正当な後継者が誰なのか知らしめるため、アマリリスはルシアンに促されて大きく動く。

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