天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
「ドレス一着分を用意するのにどれくらいかかる?」
「そうだな、なにせ特殊な製法だから一反織るのに半年かかる。ドレスで使うなら二反は必要だ。それと費用はまけても五千万ダラーだな」
「五千万……はは、それだけで王都の一戸建てが買えるな」
「なんだよ侯爵家の当主のくせにテオはみみっちいな」
「うるさい、冒険者の時の金銭感覚が抜けないんだよ。ユアンこそ金銭感覚は大丈夫なのか?」
「別に〜、欲しい分だけ稼げるから問題ないね」
「金額は糸目をつけないから安心して。アマリリスをより美しくするためのドレスなら、いくらでも僕のポケットマネーから出すよ」

 双子の兄弟は見た目こそ瓜ふたつで、テオドールが短髪、ユアンが長髪をひとつにまとめているだけの違いだ。
 しかし八年間の経験で随分と性格に違いができたようだった。テオドールは堅実で実直、ユアンは自由奔放で刹那的と正反対になっている。

(早くユアンをリリスに会わせたいな。今度はどんな風に喜んでくれるだろう)

 アマリリスのことだから、変わってしまった兄を嘆いたりはしないのはわかっている。
 テオドールの状況からユアンも似たような環境だったとアマリリスは推察するだろう。そうなったらなにも知らずに過ごしてきたと自分を責めるかもしれない。

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