天才悪女は嘘を見破る〜王太子の教育係になったはずが溺愛されてます。すべてを奪った義妹一家は自滅しました〜
「アマリリス嬢、いや、これからはアマリリス先生かな?」
「先生はやめてください。アマリリスと呼び捨てで結構です。ルシアン殿下がこのような教育を受けられていると、周囲に悟られるのもよくありませんでしょう?」

 ルシアンはわずかに瞠目して、アマリリスの思慮深さに満面の笑みを浮かべる。

「ふふっ、わかったよ。でもやっぱり敬意を払いたいから、ふたりきりのときは先生と呼んでもいいかな?」
「それならば……よろしいと思います」

 ルシアンとのやり取りはアマリリスにとっても心地よい。使用人以外から、蔑みも嘲笑もない真っ直ぐな視線を向けられたのは、いつ以来だろうか。

(なんて素直で、王族なのに腰が低いのかしら。うっかり先生呼びを許してしまったわ……! ルシアン殿下なら、これはこれでありだと思うのだけど)

 そうこうしているうちに案内された部屋は、明らかに王城内でどうも王城勤務者の宿舎とは違うようだ。そもそも目にするのは護衛の騎士ばかりで、他の王城勤務者に会っていない。

「……ルシアン殿下、こちらは本当に私の部屋でしょうか?」

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